第28章 勝利のキス
(ダメだ、この作戦は打首になってしまう)
戦国時代にタイムスリップして斬首刑で死にましたなんてシャレにならないっ!
頭を冷やして考えるべく、私はふらりと城下町にやって来た。
「それにしても、政宗の十七代目ってのには驚いたな」
歴史には詳しくないけど、二、三代続くと滅びてしまうイメージが強いだけに、そんなに続いてる家があるなんて驚きだ。
「信長様も、織田家の何代目当主とかなのかなぁ……?」
好きな人の事なのに、知らない事はまだあるんだ。
それ位、この時代背景は複雑だ。
「……って、そんな事を考えてる場合じゃない。花火大会のこと考えないと……」
信長様の家柄を聞いたら何だか恐縮しちゃいそうだし、今は光秀さんと政宗の二人を何とかする方法を探さなければ……
「うーーーーん、こうなったら何か眠り薬でも盛って…って、これもバレたら打首になっちゃう……」
打首も嫌だしでもキスも信長様以外にはしたくない。
「あーーー、八方塞がりだぁっ!」
何も良い案が浮かばないまま城下を歩いていると、珍しい人に遭遇した。
「あれっ、佐助君っ!」
「伽耶さん、久しぶり」
敵地を歩いているという自覚はないのか、近所で偶然会ったみたいに普通な態度で佐助君ば手をあげた。
「久しぶり。って言うか、こんな所、堂々と歩いていて良いの?」
佐助君は敵対する武将、上杉謙信の元にいる忍者だから、身バレしたらと思うと私の方がドキドキしてしまう。
「この表情筋のせいでなかなか分かってはもらえないが、安土にいる武将達に会えるかもしれないと思うと結構これでもドキドキはしている」
「そ、そうなんだ」
(ヒヤヒヤじゃなくてドキドキなんだ……?)
どうにも噛み合わない、けれども佐助君らしい会話にクスッと笑いが漏れた。
「伽耶さんは変わらず元気そうだな」
「うん、元気だよ。でも今ちょっと困ってて…って、あっ、佐助君に聞きたいことがっ!」
私は佐助君に花火大会の事を詳しく説明し、その上でその賭け事をさせなくする方法がないかを聞いてみた。