第28章 勝利のキス
「政宗っ!」
(何で政宗までここにっ!って言うかお酒のことどうしてバレたのっ!?)
「どうして俺がここにいて酒のことがバレたのかった顔だな」
(考えが読めるのっ!?)
「お前の考えは全てお前の顔に書いてある」
「うっ、嘘だっ!」
「本当だ。お前もそう思うから顔を今隠したんだろ?」
政宗も私に顔を近づけてふっと笑った。
まさに前門の虎、後門の狼状態っ!
「お前、俺が伊達家の当主って忘れてないか?」
「えっ?忘れてないよ。何急に」
ここにいる武将達が各領地のお殿様だって事はちゃんと分かってるよ。
(あまりに普通に接してくれるから、実はちょいちょい忘れがちだけど…)
「ならいいが…、俺に何か盛ったりしたら、伊達家と織田家の戦になるって事、忘れるなよ?」
「こっ、怖いこと言わないでよ」
「脅しているわけじゃぁない。伊達家一七代目当主の俺に何かあったら大事になるってことを教えてやってんだ」
「じゅっ、十七っ!政宗の家ってそんなに続いてるのっ!」
「そうだ。鎌倉時代から続く家だ」
(そんな前からっ!めっちゃいいとこの子じゃんっ!)
「酒を盛られて倒れた原因がお前だって分かったら、いくらお前でも打首かもなぁ」
「うっ、打首っ!」
「それを言うなら、信長様の名を語り虚偽の休暇を俺に取らせようとした罪も打首決定だな」
光秀さんまでもが、私の打首刑を楽しそうに口にした。
そして二人はニヤニヤとしながら、狼狽える私の首の左右にそれぞれ手を当ててチョンっと、切る振りをした。
「やっ、脅さないでよ!だっ大体政宗が私を賭けるなんて変なこと言い出すから悪いんだからね!」
(こんな事、私だってしたくないんだからっ!)
「お前からの口づけ、楽しみだな」
「政宗、それは俺のセリフだ」
「もうっ、二人のイジワルっ!」
二人の手を首から払いのけ、すり抜けることに成功した私は、二人が声高らかに笑う声を聞きながらその場を逃げ出した。