第4章 カエルの正体
「貴様…本気で言っておるのか?」
「もちろんです。あ、そうだ!信長様には特別に、とっておきの宴会芸を披露させて頂きます」
忘年会で披露したトランプマジックの事を思い出し、それをオプションで付けた。
(さぁ、どうだ!)
思いっきり苦しいこじつけだけど、でももう押し通すしかない私は、真っ直ぐに信長様を見つめた。
「………」
信長様は目を細め私をしばらく見ると、
「……秀吉」
「はっ!」
「此奴らを連れて行け」
そう言って、刀を鞘に納めた。
「……は?」
秀吉さんは驚いた顔をしてる。
「宜しいのですか?」
そして秀吉さんは確認をする。
「二度も言わせるな」
「はっ!かしこまりました。おい、お前たち、コイツらを引っ立てろ」
「はっ!」
秀吉さんの命令で、家臣たちが男たちを捕らえて連れて行く。
(なんとかなったって…思っていい?)
「…おい」
信長様が私を再び睨む。
「はっ、はいっ!」
(まだ何か?)
「いい加減その手を離せ」
「あっ、えっ、あぁっ、ごめんなさいっ」
強く掴んでいた手をパッと離したら…
「あ、…」
支えを失った私はその場で崩れ落ちた。
「伽耶?」
「おい、伽耶大丈夫か?」
信長様と秀吉さんが私に交互に声を掛ける。
「だ、大丈夫……です」
どうやら、人生初、腰が抜けたらしい。
どうにも足に力が入らなくて立ち上がれない。
「おかしいな…力が…」
腰が抜けた事を悟られないように、地面に手をついて立ちあがろうとしていると、目の前の地面に水が落ちて染み込んだ。
「……えっ、」
ぽた…ぽた…ぽたぽたぽた……
雨が降って来たわけでもないのに、手をついた周りの土には水がどんどん落ちて染みを作っていく。
「あれ?私……」
(泣いてる……?)
地面を濡らしているのは雨じゃなくて私の涙だ。
「伽耶?」
秀吉さんが再び声をかけてくれる。
「っ、ごめんなさい。違うんです。これは…」
拭っても、拭っても、涙が溢れてきて止まらない。
いまだ治らない体の震えをを抑えようと自分の体を抱くけど、これも治らない。
ここに来てからずっと張り詰めていた緊張の糸が切れてしまった。