第4章 カエルの正体
「伽耶斬られたくなければ退けっ!」
「っ……」
冷たい目が私を制す。
「伽耶危ない、退いてろっ!」
秀吉さんも私に離れろと言って来る。
でも、
「むっ、無理っ!だって止めないと目の前で人が死んじゃうんでしょ?私そんなの見たくないっ!」
声が震える。こうやっている今も信長様は私を睨んでいて、掴んでいる腕を乱暴に振り払われて斬られても不思議じゃない。
「私は何もされていませんし無事です。お願いです。その刀を収めてください」
信長様の腕を掴む手も震えてるし、立っている足もガクガクする。テレビで見るのとは全然違う。気をしっかりと持たないと飲み込まれそうなほどの冷気だ。
「伽耶、貴様の願いを聞いても俺にはなんの益もない」
「え?」
「此奴らは生きているだけで悪だ。そんな奴らを貴様の願いで助けて何の益になるのかと聞いておる」
「それは…」
人の命に損得などないけど、きっとこの時代の人には通じないんだろう。でも何かを言わなければとない知恵を絞る。
「ないのなら退け、見たくなければ目を瞑っていろ」
信長様は私の腕を振り払って刀を振り上げた。
「ヒィーーお助けをっ!」
(早く何か良いこと……あっ!)
「あっ、あります!ありましたっ!」
アイデアの浮かんだ私は信長様の腕にもう一度飛びついた。
「……ほぅ、言ってみよ」
「私が、今夜晩酌に付き合います!」
「……はっ?」
(あれ?なんか違う?)
「……晩酌だと?」
何言ってんだコイツって、信長様の顔に書いてあるようだ。
「伽耶、何言ってんだ?もうそこでやめておけ」
信長様の気持ちを代弁するように、秀吉さんが小声で話しかける。
でももう言葉は口から出てしまって取り消せない。
「えっと、確か昨夜私の飲みっぷりを褒めて下さったので、…その飲みっぷりを今夜もご披露させて頂きます…よ?」
自分でも何言ってんの?って思うけど、引き下がるわけにはいかない。
「ねっ?楽しそうで、とても益のある事だと思いませんか?」