第28章 勝利のキス
賭け事を回避出来ないなら、弱点を探るか用事を作って出られなくしちゃえば良いんだなんて、我ながらいい事考えついちゃった(←悪伽耶さん発動中)
「政宗は何とかなりそうよね」
両手をグッと握りしめて政宗への手応えを噛み締めていると天の助けが現れた。
(あっ、あの人確か光秀さんの家臣の九兵衛さん!)
光秀さんに直接何かが出来ると思えない私は、九兵衛さんに協力をしてもらおうと、彼を呼び止めた。
「九兵衛さーん」
「おや、これは織田家の姫君。私に何か用ですか?」
穏やかな笑みの九兵衛さんとはあまり話したことないけど、物腰柔らかであの光秀さんの側近の方とは思えない良い人だ。(たぶん…)
「あの九兵衛さんにお願いがありまして……」
「私に?光秀様ではなくてですか?」
「はい。その光秀さんの事でお願いが…」
「何でしょう?」
人の良さそうな笑みに、次の作戦もうまく行く気がして私は声を弾ませた。
「今度のお祭りの日なんですけど、光秀さんにご自身のお城へ戻ってもらう予定を入れて頂きたいんですが、難しいでしょうか?」
「これまた急なお願いですな。何か、光秀様にお城に戻って頂きたい理由でもあるのですか?」
(そうよね、家臣として内容確認は大切よね)
想定内の問いに、私は用意していた答えを返す。
「理由と言いますか、光秀さんはもうずいぶん長い事ご自身の領地には帰られていないと聞きまして、お祭りの日位ご領地に帰られてゆっくりされてはと思いまして」
「なんとお優しい。流石は織田様のご寵姫様でいらっしゃる。ですが、織田様から直々に言われたわけではありませんし、一家臣である私がそのような事を光秀様に進言する訳には…」
(そうか…そう言うものなのね…
会社と同じで有給休暇の取得には上司の承諾が必要なんだ……)
でもここで引き下がってはいけないっ!
「じゃあ、私から信長様にお伝えしておくって言うのはどうですか?」
「はぁ……だそうですが、如何なさいますか?光秀様」
九兵衛さんは、私の後ろの高い位置へと目線を移してそう言った。