第28章 勝利のキス
「三成、良い事言った」
「もー、政宗は黙って!」
「小娘からの祝福は確かに誉だな。感動で心が震えそうだ」
「光秀さん、全然思ってもいない賛辞をありがとうございます」
「伽耶落ち着け、目が吊り上がってるぞ」
「秀吉さんっ!うそっ!」
慌てて目元に手を添えて目尻を指で下げた。
「もう信長様っ!何とかして下さいっ!」
「そう吠えるな。祭りを盛り上げよと命じたのは他ならぬ俺だ。その俺がどうしてこの様に愉快な案を却下できよう?」
「なっ!」
(あなた、恋人が賭けに使われてるって分かってますっ!?)
「それにこれは決定事項だ。貴様と言えど異論は許さん」
(はぁっ!?)
この言葉を心の中だけで留めたことを褒めて欲しい。
「軍議は終わりだ。各々、祭りを派手に盛り上げよ」
「「「「「はっ!」」」」」
信長様はそう言って部屋から出て行ってしまった。
「信長様っ、待って下さいっ!」
そして私はもちろんそんな信長様を追いかける。
「どうしてあんな事了承したんですかっ!」
「案ずるな、俺は負けん」
「どうしてそう言い切れるんですか?家康も言ってたじゃないですか!花火には当たりハズレがあるって……」
(運任せなんて不安だよ)
「俺を信じよ。勝利も、貴様の口づけも俺がもらうと決まっている」
スルッと私の腰へと手を回し口づけようとする信長様を止めた。
「誤魔化さないでくださいっ!信長様以外の人と口づけるなんて、例え頬や額でも嫌ですっ!」
「当たり前だ。そんなこと、例え話でも貴様は口にするなっ!」
「はぁっ!矛盾してませんか?」
恋人のキスは賭けるくせに、例え話はするななんて!
「とにかく俺を信じろ。祭りも盛り上げる。貴様の勝利の口づけもモノにする。一石二鳥の祭りにしてやる」
「うーーーーその自信、信じていいんですね」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってる」
「うーー、オレ様です」
「ふっ、上等だこの跳ねっ返りめ」
信長様は愉快な笑みを浮かべて私の額に口づけ、そして私の唇を深く奪った。