第28章 勝利のキス
「ひゃー、熱そうー」
(30尺って、10m位吹き上がるって事だよね?)
「どれほど用意できる?」
信長様はいつも通りの静かな顔で聞いてるけど、楽しそうなのが伝わって来る。
「仕上げた物を運ぶには距離がありすぎるので、材料だけを運んでこちらで組み立てるのなら希望の数は揃えられるかと……」
「なるほど…」
そして再び考え込み………
「それを今年の花火に組み込め」
楽しそうに口角を上げた。
「はっ、すぐに手配します」
家康は返事をして頭を軽く頭を下げた。
「ただ手筒をやるだけじゃつまんねぇな」
花火の件はこれでまとまったと思いきや、政宗の一言が部屋に響いた。
「では貴様ら武将がトリを飾り祭りを盛り上げよ」
信長様はその意見にすぐ様答える。
「なる程………、だがそれだけじゃ足りない。せっかく俺たちが出るのなら勝負方式にしてくれ」
何とも政宗らしい意見が飛び出した。
「ほぅ、どのように勝負するつもりだ?」
信長様も嬉しそうに聞き返す。
「手筒花火は線香花火の様にその筒によって炎の吹き出す長さが違うと聞いた。ならばその長さを競うってのはどうだ」
「なるほど、面白い。良いだろう。勝負には褒美もとらせる」
嬉々として言う政宗に対し、信長様も楽しそうに許可を出した。
「ならば、勝者にはそれに相応しく、勝利の女神からの褒美を貰いたい」
政宗は尚を言葉を続ける。
「ほぅ、勝利の女神とは誰のことを指しておる?」
信長様がそう問うと、
「もちろん伽耶だ」
政宗はそう答えた。
(へっ!?)
その言葉に驚いたのはもちろん私で…
「勝者には、伽耶からの勝利の口づけをもらう」
政宗の再度口にした言葉で、今年の夏祭りは私にとってとても穏やかじゃないものへと変わってしまった………!