第4章 カエルの正体
「貴様ら、その女が誰の女か分かってやっておるのだろうな」
低い声が路地裏に響いた。
(この声…)
男三人と私の視線はその声の方に向く。
「のっ!」
(信長様っ!)
「ああっ!なんだてめぇ」
私の声よりも大きな声で男が怒号を飛ばす。
「信長様っ、如何なさいましたっ!」
信長様の背後から秀吉さんと家臣数名が走って来た。
「………のっ!信長っ!」
怒声を浴びせた男はその浴びせた人物が信長様と気づくと、みるみるうちに顔色が青白く変わっていく。
「「ヒィーーッ!」」
私を担いでいた男たちも声を上げて驚き、私を担ぐ腕を離した。
「いたーーーっ!!」
担ぎ上げられていた身体は無惨にも男たちの手を離れて地面へと叩きつけられ、痛みが襲いかかる。
(痛い痛い!いたーーーーい!)
あまりの痛みに悶え苦しんでいると、
「貴様ら、俺のものに手を出すからには、覚悟はできておるな」
スラリと信長様は日本刀を抜いた。
「ひぃっ、命だけはどうか、つい出来心で、それにまだ何もしておりません」
男たちは地面に平伏して命乞いをする。
「言いたいことはそれだけか?」
助けてやる気なんて一切ない。と、その刀を振り上げる綺麗な顔が言っている。
殺気や怒りなどの感情はその目からは感じないのに、ゾクリと背筋に寒気が走るほどの冷気を感じる。
(この人たちは今から殺される……?)
秀吉さんや家臣達を見ても、まるでそれが当たり前かのように男達を厳しい目で睨みつけているだけだ。
「やっ、待ってっ!」
地面に打ち付けられた体は痛いけどそれどころじゃないっ!
「待って、殺さないでっ!」
体を起こして信長様のもとまで走り寄り、刀を振り上げる腕を掴んだ。