第27章 知らぬが仏
〜次の日〜
川のせせらぎに混じり鳥のさえずりも耳に届き目が覚めた。
「ん……」
日の差し込む方を見ると障子は閉められていて、昨夜信長様が閉めてくれたのだと思い、腕枕をしている腕にちゅっとキスをした。
「どうした?朝から煽るとは、まだ抱き足りんか?」
当然のように起きている恋人の、イタズラな声が頭から聞こえてくる。
「十分過ぎて今朝も力が入りません」
どんな抱かれ方をされてもぐずぐずに蕩けてしまうから、朝は怠さが残って布団の中からしばらくは出られない。
「急ぎの用事はない。ゆっくり起きればいい」
そう言いながらも信長様は私の体のあちこちにソフトタッチしていき熱を徐々に灯していく。
「っ、もう、言葉と行動が伴ってません。今日は今から安土に帰るんですから困りますっ!」
イタズラな手をやんわりと止めて抵抗していると、視界に絶対に入れたくないものが入って来た。
「……ん?まさか………?」
その何かを注視すれば、黒くて細長い生き物の死骸!
「っ、やっ、信長様っ、あそこっ、何か死んでるっ!」
布団から半身起こして見れば、そこらじゅうに同じ生き物の死骸が……!
「ひーーーっ、何これっ!」
もうこれで、一歩も布団から出られない事が確定!
「何を騒いでおる」
私の声に反応し、信長様もゆっくりと身を起こした。
「なんか、虫がいっぱい死んでます。昨夜ホタルと一緒に入って来たんでしょうか」
昨夜はホタル鑑賞のために真っ暗にしてたし、障子も開け放ってあったから、いつのまにかこんなにも他の虫が入って来てたなんて知らなかった。