第25章 余裕な彼
夕刻、初見せとなる私を中心に遊女達が店先へと出て客引きを始める。
(うう…悔しいけど女将の言う通り、みんな若くて可愛い)
さすが京一番の大店。綺麗どころが揃っている。
(でも、さっき歳を聞いた子は16歳だと言っていた)
私のいた時代なら法に反する事なのに、この時代では当たり前だと言う。
そしてそんな当たり前をなくすために信長様達は頑張ってる。だからそんな信長様のお役に少しでも立ちたいのに…
「足を引っ張ってばかりだわ…私……」
あんなにも気をつけろって言われてたのに簡単に捕まって…
こんな足を引っ張ってる場合じゃないって分かってるのに、どうしても期待をしてしまう。
信長様は絶対に助けに来てくれるって……
呆れた顔で、何をしてるって言って助けに来てくれるって……
「信長様、助けて……」
「甘ったれた事言ってんじゃないよ!信長様だって男だ。もうとっくにお前を見限って若くて綺麗な女を捕まえてるさ」
愛しい人を思い浮かべ涙ながらに呟くと、ブラック女将がまたもや言葉の刃を浴びせてくる。
「そんな事…信長様はきっと……」
きっと……
迎えに来てくれ……ない……かも?
ブラック女将の言う事はあながち間違っていない。
だって男の人はみんな若くて綺麗な子が好きだもの(←すごい偏見)
私みたいな面倒くさい女がいなくなって実は清々してる?
ああほら…
最近はなりを潜めてたカエルが頭をもたげ始める。
自己嫌悪に陥りやすいのもカエル女の特徴の一つだから……
言うことを聞かない面倒くさい、とうのたった女…
それが今の私…
信長様が迎えに来るわけ……
底に向かって気持ちが沈みかけた時、
「おいっ!すげぇ綺麗な女だな」
そんな声が聞こえてきた。