第25章 余裕な彼
船上オークションで落札された私は、女衒(ぜげん)と言う遊女屋へ女を売ることを生業とする男に連れられ、京一番の大店だと言う遊女屋へと連れられて来た。
「すご……っ!」
京一番と言うだけあって、まさにその通りの店構えと内装に思わず声が漏れた。
「今から女将に会わせるが、せいぜい愛想よくしろよ。この店ならたんまり稼げるだろうからな」
私を買った男はそう言っていやらしい笑みを浮かべる。
「稼ぐって、そもそも私に借金はないのに何のために働かされるんですか?」
「はんっ、元就様の言うとおり、随分と世間知らずで抜けてんだな。お前はこれからこの店と元就様、そして俺のために一生身を売って働くんだよ」
「はぁっ!」
「お前の稼ぐ金は店と元就様と俺とで山分けだ。男どもに媚び売ってたくさん稼ぐんだな」
「何言ってんの!なんで私が毛利元就なんかのために——」
「ああっ?何生意気なこと言ってんだテメェ、路上で客取るような店に売ってやろうかっ!」
「…っ、怒鳴らないでっ!」
毛利元就もこの男も怖すぎるのよっ!
勝手に売り物にされて京の店に売られるなんて、しかもそのお金はあの毛利元就に入るなんて、怒れるに決まってるじゃないっ!(でもこれ以上言うと暴力を振るわれそうで怖くて言えない)
「次生意気なことを言えば最悪な環境下に売り渡すからな。黙ってついて来いっ!」
「っ………」
悔しいけど、大店にいる方がきっと助かる確率も逃げる確率も上がる気がする。
自分の身を売るなんて冗談じゃない!しかもそのお金が毛利に渡るなんて絶対に嫌だっ!
(絶対に隙を見て逃げて安土に戻るんだから……っ!)
先を歩く男の背中を睨みながら、私は逃げる事だけを考えていた。