第25章 余裕な彼
「っ、天主を攻撃したあの大筒か……」
船は大きく揺らぎ、足元をふらつかせる。
「えめぇら、引けっーーー!」
その隙に元就は味方に合図を送り織田軍の船から撤退して行く。
「っ、元就待てっ!伽耶をどこへやった?」
「さあな、どこかの遊女屋に買われていったから、京のどこかにいるんじゃねえか」
「っ、貴様っ!」
斬りかかろうとする信長に、元就は牽制のピストルを撃ち放った。
「っ………!」
「だからカッカすんなって、次に会う時はもっとド派手な花火を打ち上げてやるよ!」
元就はそう言い捨て、家臣達と共に船から引き上げて行った。
「御館様、追いますか?」
光秀、秀吉が信長の元へと戻り伺いを立てる。
「いや、我が軍の打撃のが深刻だ。船が沈む前に港に停泊させ兵達を船から撤退させよ」
「はっ!」
「なるほど…謀神か。相手に不足はないな…..」
商用船とは言え船を壊され打撃を与えられた信長であったが、元就同様にこの状況を愉しむように口角を釣り上げ不敵な笑みを浮かべた。
・・・・・・・・・・
大津に降り立った信長は、負傷兵は長浜城で休ませ、動けるもの数名と武将達を引き連れ京の都の遊女屋街へと入った。
「あれ程の女だ。下手な店には行っていない。京の大店から探る」
一体いつ売られたのか?
今朝か?
それとも……
もし客を取らされたりなどさせられていたら……
(そのような事があれば相手の男も店の者も皆無事ではすまさん!)
探し出し助ける以外に方法がない信長は歯痒さで奥歯をぎりっと強く噛んだ。
「御館様、どうやら探す必要はなさそうですよ?」
「なに?」
光秀が指さす方を見ると大店に人だかりが……
「初見せか?」
新しく店に出て客を取る遊女を店頭にて披露する初見せ…
「まさか…」
ゆっくり探るようにその店へと近づいていくと、
〔大名の寵愛を受けた娘〕
として売り出されている伽耶の姿が……!