第25章 余裕な彼
ワーーーーーー!!!!
船内は一瞬で戦場と化す。
「御館様っ!敵襲ですっ!」
秀吉が敵襲を知らせに走ってくる。
「毛利は日ノ本一の水軍を操ると言うが、まこと我が軍に欲しいくらいだな」
「勧誘して参りましょうか?」
秀吉の焦りをよそに、信長と光秀は愉しげに敵を見据える。
「感心している場合じゃありませんっ!光秀っ、お前もつられるなっ!御館様ご指示をっ!」
「分かっておる。何者であろうと邪魔者は排除するのみ!早急に片付けて伽耶 を助け出すぞっ!」
「「はっ!」」
三者刀を抜いて敵を迎え討つ。
そこへ先陣を切って走って来たのは船の先に立っていた男……
「御館様、ここは俺が」
秀吉が刀を構える。
「いや、俺が迎え討つ」
信長はそれを制して刀を構えた。
「織田信長だな!」
走ってくる男は声高らかに叫ぶ。
「そうだ。お前は毛利元就だな」
男は返事をする代わりに刀を抜いて信長に斬りかかった。
ガキンッと、両者の刀が交わる。
「伽耶はどこだ?」
「伽耶?ああ、あの女か、そういや名前は聞いてねぇな。そんなに大切な女なら鎖に繋いでおけよ。まぁ俺が代わりに鎖で繋いでやったけどな」
「っ、貴様……!」
信長のただならぬ殺気を感じ取った元就は、信長の刀を鍔で弾いた。
「そんなかっかすんなよ。今日は貴様と本気でやり合う気はねぇ」
「何?」
元就はそう告げると信長から距離を取り片腕をまっすぐ上に上げた。
「今日はてめぇの顔見に挨拶に来てやっただけだ。手土産だ。受け取れっ!」
サッと上げた手を下ろした瞬間———
ドォン!
織田軍の船に大音量と共に衝撃が落ちた。