第25章 余裕な彼
「売るって……そんなの犯罪でしょっ!」
「俺は海賊だ。罪を犯してなんぼなんだよっ!」
「海賊?武将じゃないの?」
「んなもんどっちでもいい。世の中を乱れに乱せるならな……」
ドラマでしか見たことがない程悪い顔で笑ってる…
しかも海賊って……、いやいや海賊にビビってる場合じゃない!とにかく売られることを回避しないと!
「私は…人質なんじゃないの?なのに売ったりしたら交渉材料が無くなっちゃうんじゃないの?」
「交渉なんざする気はねぇ」
「はっ?」
「必死で救い出せたと思ったお前がどっかに売られたって知った時の、織田信長の焦った顔が俺は見たいんだよ」
「………っ!」
(狂ってる!)
「帰蝶も…あなたの仲間も同じ考えなの?」
確か帰蝶は毛利元就の仲間だって信長様達は話してたよね?
「へぇ、お花畑な割に情報だけは持ってるようだな。まぁいい、ついでだから教えてやる。あいつは今回の件には関係ない。これは俺なりの宣戦布告だ」
宣戦布告って、信長様を焦らすためって、そんな事のために私を攫ったの?
「………っ、卑怯者っ!」
「はんっ、お花畑に言われても痛くも痒くもねぇな。話は終わりだ。おい、連れて行けっ!」
ガシッと、男二人が私の両腕を掴んで立たせた。
「離してっ!触らないでっ!」
「うるせぇな、ガタガタ騒ぐんじゃねぇよ」
元就は面倒くさそうに私に近づき、首輪につけられた鎖を引っ張った。
「……っ!」
信長様と同じ紅の目なのに…残忍さを含んだその目にゾクリと恐怖を感じる。
「良いことを教えてやる。今日の買人の中に異国の奴はいない。運が良ければ信長に探し出してもらえるかもな」
値踏みするような視線を一瞬向けると鎖を掴む手を離して、元就は笑いながら部屋から出て行った。
「ちょっとどこ行くのっ!待ってよっ!」
「うるさい、お前はこっちだ」
男達が私の体を引き摺りもう一つのドアの方へと連れて行く。
「やだっ、痛いっ!離してっ!いやっ!」
叫ぼうが抵抗しようがそんなものは全く意味がなく、私はそのまま船の中のオークション会場で人身売買の競りにかけられ………
「今日からお前の名前は”紫”(むらさき)だよ」
「えーーっ!」
あれよあれよと言う間に京の遊女屋へと売られて来てしまった……