第25章 余裕な彼
「その手品師とやらは如何した?」
「はっ!すでに捕らえて尋問を始めております」
「何と言っておる?」
「金で雇われただけだと..」
「そうか…、恐らくはそうなのであろうな」
(港から連れ去られたと言うことは、奴はすでに船に乗せられている可能性が高いな)
「向かうは京か堺…、となれば我らも船で追わねばならんと言うことか…」
信長はそう言うと、顎に手を当て考え込んだ。
「恐らくは、帰蝶、毛利の仕業と見て間違いないでしょう」
光秀が私見を述べる。
「そうだな」
(だが船で向かうとなると動かせる兵の数も限られる。しかも京に大軍を投じることは出来ぬ)
「光秀、慶次に密書を送り急ぎ西の大名共から兵をかき集めるよう伝えよ」
「はっ!」
「秀吉っ、急ぎ船の支度を!大事になる前に敵を捩じ伏せ伽耶を救い出す。他の者は直ぐに出立できるよう、各々準備に取り掛かれっ!詳しい作戦は船の中で立てる」
「「「「はっ!」」」」
武将達は頭を下げそれぞれの任務へと向かった。
そして広間に一人残った信長は…
「あの跳ねっ返りが、あれだけ念を押してこれか……」
伽耶に対し、呆れと怒りを滲ませていた。
「必ず無事でいろ。だが見つけたらタダじゃおかんっ!伽耶、覚悟して待っておけ!」
……ぞくりっ!
「ううっ!(ひゃっ!)」
(何だろう?今、寒気と恐怖が一気に背中を突き抜けたような……、この部屋寒いから風邪ひいたのかも……)
信長様がこの上なくお怒りだとも知らず、私は何とか逃げる方法はないかと、必死で体を捩りながら考えていた。