第25章 余裕な彼
〜その頃安土城では〜
「何っ!伽耶が攫われたっ!?」
戦に向けての軍議中、伽耶の護衛が息を切らして戻って来た。
「攫われたと言っておめおめと戻ってくるとは何のための護衛だ!」
秀吉が立ち上がり、護衛の男に檄を飛ばす。
「申し訳ありませんっ!この上は腹を切ってお詫びを…」
護衛の男は素早く短刀を抜いて腹に当てた。
「貴様の死に様など見ても何の益にもならん。時間が惜しい。何があったのか話せ」
信長はそれを止め冷ややかに男を見下ろした。
「はっ、ははっ!」
護衛の男は短刀を置いて平伏し、そして、何があったのかを話し始めた。
そして………
「じゃあ伽耶は、自分からその袋に入って攫われた訳だな?」
半ば信じられないと言った表情で秀吉が質問をする。
「はい。手品師に指名され、それは嬉しそうに袋の中へと入っていかれ、そのまま行方が分からなくなりました」
「呆れた。能天気だとは思ってたけどそこまでとはね…」
家康も呆れ声を出す。
「やっぱ面しれぇ。あいつの事だ、自分が連れ去られたって事にまだ気づいてないんじゃないか?」
政宗は無きにしもあらずなことを口にする。
「あの小娘の事だ。あり得るな」
クックックッと喉を鳴らしてそう答えたのは光秀。
「伽耶様は本当にその手品師に奇術によって隠されたと言う事はありませんか?」
「隠されたんじゃなくて、本当に攫われたんだよ。三成、お前は黙ってて」
「ともあれ早く救い出さなければ伽耶の身が危険だな……、御館様、如何なさいますか?」
渋い顔で武将達の言葉に耳を傾けていた信長に秀吉が意見を仰いだ。