第25章 余裕な彼
『え、私?』
『お姉ちゃんすご〜い』
すでにこれが罠だったなんて思うはずがない。
こんなことに選ばれたことのない私は完全に舞い上がってしまって、
『きゃー、良いんですか〜』
まんまと罠にハマり、その袋の中へ嬉々として身を投じた。
(ああ…あの時の私に蹴りを入れてやりたい!)
『ひー、ふー、みー、と十数えると、この娘さんの姿が消えちゃうよー。さぁみんなで数えてみよう』
そんな声が聞こえる中、私の袋と空の袋が多分すり替えられたのだろう。
担がれてる感はあったけど、それもマジックの演出に必要なのだろうと暫く耐えていた。
けれど、待てど暮らせど私の出番はやってこない。
『あのー、まだでしょうか?』
たまりかねて、声を出し問いかけると、
『本当にこんなことに引っ掛かるとは馬鹿な女だ。』
『えっ!』
さっきまでとは全く別人の声がして、そこで漸く自分がヤバい状況に陥っているのだと気付いた。
一旦袋から出された私は乱暴に口を塞がれ手足を縛られ目隠しをされ、そして今いるこの部屋へと投げ込まれてしまった。
(殺されちゃうのかな……?)
心臓はいつ胸を突き破って出て来てもおかしくないほどにドクンドクンと騒ぎっぱなしだ。
(いや、殺されるならいっそ心臓が飛び出て今死んでしまいたい。………いやいやいや、弱気になっちゃダメ!何とか助かる方法を考えないと……、でもこの縛られ方で海の上って、もう魚の餌決定なんじゃ………!うーー、ネガティブ禁止っ!でも………)
頭の中はずっと大混乱を極めている。
助かりたい。でも絶望的なこの状況を何とかできる頭脳は持ち合わせていない。
「……っ、うゔうゔううー(信長様ー)」