第25章 余裕な彼
『わぁっ!飴細工っ!』
『見てみてっ!綱渡りしてるよっ!』
子供達には見るもの全てが新鮮で楽しそうで、目を奪われたら最後、サッとその興味の方へ走って行ってしまう。
『待ってみんなっ!はぐれないように手を繋いで』
すぐにでも見失ってしまいそうな混雑具合に、子供達にはそれぞれに手を繋いで離さないように伝えた。
『伽耶様、やはり引き返しましょう』
護衛の方は刀の柄に手をかけたまま険しい顔で私にぴったりと寄り添っている。
(確かに、この人混みは避けた方がいいかも……)
あまり作動しない私の危険感知機が警報を鳴らしている。
『みんなやっぱり——』
『お姉ちゃん連れて来てくれてありがとう』
『こんなすごいお祭り初めて』
『………っ』
帰ろうなんて…言えるわけがなかった。
『一刻とは言いません。半刻ほどで必ず戻りますから、お願いします』
嬉しそうにはしゃぐ子供達の顔を曇らせる事はできず、なるべく早く切り上げようと子供達と手を繋ぎ祭りの喧騒の中へと溶け込んで行った。
………今考えれば考えが甘かった!としか言いようがない。
戦国時代と言うものを舐めていたと言えるけど…、でもお祭りの中に敵方のスパイが紛れ込んでるなんて、そんなドラマのような事が起こるとは思わなかったんだもの…
子供達と鳥の形をした飴細工を舐めながら、綱渡りや皿回しをする旅芸人の芸を観覧する事にした。
その華麗な技に見惚れていると、現代のマジックショーみたいなことが始まった。
『さあさあお立ち会い!』
手品師が大きな布の袋を取り出し、その中に人を入れて消してしまうと言う。
『どなたかお手伝い下さる方はいらっしゃいませんか?』
手品師は観客をぐるりと見渡し、
『そこの綺麗な娘さん、お手伝い頂けますか?』
私が、マジックのサポート役に選ばれた。