第25章 余裕な彼
こー言う時って、どうするのが正解?
落ち着く事?
そうだ、とりあえず落ち着こう!
落ち着かないと考えることはできない。
そうだよ。叫んだって誰も来るわけない。
だって体はずっと揺れている。
多分、攫われて船に乗せられたんだ。
……今日はお寺の子供達と会う日でお寺に行ったら、
『お姉ちゃん、お祭りに連れてって!』
子供達が港でお祭りがあるから行きたいって言って来て、
『えー、お祭り?楽しそうっ!行ってみようか』
って答えたら、
『伽耶様、お祭りに行く許可は御館様から得ていません』
って護衛の方言われて、
『あ、そうですよね……』
と、フラフラ出歩かないと約束したばかりの私は一旦ここで思いとどまり、断ろうと子供達に向き直った。
しかし、
『ダメなの?』
『行きたいよー』
『お姉ちゃんお願い』
と、ウルウルした子供達の瞳の威力には勝てず、
『じ、じゃあちょっとだけ見に行こうか』
と、子供達をお祭りに連れて行くことにした。
『伽耶様いけませんっ、御館様に叱られますっ!』
ごもっともな意見。
護衛の方は焦って私を止めようとしてくれたのに、
『一刻だけ!子供達を少しお祭りで遊ばせたらすぐ帰りますから。お願いしますっ!』
信長様には私から説明して私がお叱りを受けるからと、両手を合わせてお願いをし、渋々了承させ、子供達を連れて港のお祭りへと向かった。
安土の港は日々様々な船が出入りし賑わっているけれど、その日はいつも以上の賑わいを見せていた。
元々あるお店以外に露店も多数立ち並び、人でごった返した道を旅芸人が楽器を鳴らしながら練り歩く。
品物に魅入る人、旅芸人の技に魅入る人、船の大きさに目を奪われる人など、様々な人で溢れ返っていて、地元の人だけではない事は一目瞭然だった。