第24章 エゴサーチ
「汁粉は包むわけにはいかんからな。団子に化けたがこれで我慢しろ」
「我慢なんて…凄く嬉しいです。ありがとうございます」
信長様は私がお汁粉を食べに行かないって答える事を多分分かってたんだ。それで代わりにこれを…
「信長様、ありがとうございます」
お礼の言葉と、そしてキスを信長様の口にした。
「……っ」
信長様は一瞬驚いて、
「悪くない」
キスのお返しをくれた。
「ん………」
湖へ行きたいと言ったのは、散財する所を見られたくないとかそんな理由じゃなくて、あの唐物屋で信長様に会った時からずっと信長様に触れたいと思っていたから……。
だから二人きりになれる場所に行って、早くキスをしたかったんだ。
唇が音を立ててゆっくりと離れて行く。
まだ繋がっていたいと言っているかのように銀糸が伸びて照れ臭さを連れてくる。
「口づけだけで真っ赤だな」
「っ、言わないで下さい」
私の火照った顔を見て笑い、その赤らんだ頬に信長様は優しく唇で触れる。
とても甘くてくすぐったい…二人だけの幸せな時間。
「伽耶、間も無く戦が始まる」
「え……?」
幸せな空気が途端に止まった。
エゴサーチなんてしてる場合じゃなかった…!
ここは、明日の命も保証されない戦国時代なのだと、今の一言で思い出させられた。
「西の方が何やら騒がしくなって来た。何が起こっても不思議ではない」
「西って……堺の方ですか?」
「そうだ。死んだと思われていた武将が生きていて、堺の方で好き勝手に戦の準備を始めておるらしい。それに連なる気になる人物の名も上がっている。近い内に大きな戦が起こる」
確か佐助君達も堺に行くって言っていた。彼らの行動もそれに関係があるのかもしれない。
「戦になれば信長様も……?」
「西は天下統一の為の要所だ。行かぬわけには行くまい」
「では私も一緒に…」
「貴様は連れては行かぬ」
まるで私がそう言うと分かっていたように、信長様は私が言い終わる前に私の同行を却下した。