第24章 エゴサーチ
「でも前は…、信長様の生きる時代を見ろと言って連れて行って下さったじゃないですか」
「あの時は、貴様をこの時代に引き止めるための苦肉の策であったからな……。だが結果として貴様を危険な目に合わせた」
「あれは私が勝手に落馬したからであって、信長様のせいではありませんっ!」
「同じだ。それにあの頃と今とでは貴様の立ち位置が大きく違う。貴様が俺の女である事はこの日ノ本中に今や知れ渡っておる。織田の領内ならまだしも、敵地へ赴くとなればどんな危険が貴様に降りかかるか知れん」
「それでも…」
「伽耶、貴様に戦地は似合わん」
長い指が私の顎を捉え視線を間近に合わせた。
「貴様は呑気に笑っているのが似合う」
「っ、信長様が戦っている時に呑気に笑うなんてできません」
「心配せずとも俺は死なん。貴様の物事をすぐに拗らせ焦る顔は中々に愉快だからな…それを見に必ず戻る」
「それ…褒めてませんよね…?」
「限りなく褒めておる」
顎に掛かる指に引き寄せられるとゆっくりと唇が重なった。
戦話を聞いてしまったから…甘さと共に鼻がツンとなった。
初めて戦に連れて行かれた時は死にたくなくて怖くて逃げ出したかったのに、今は連れて行ってもらえないのが辛いなんて…人は、人を愛するとこんなにも変わるのだと実感する。
「…………っん」
角度を変えて何度も口づけあい思いを交わし合う。
私が好きなった人は、この世を変えようと戦う人。
そして、本当の私を理解し受け入れ愛してくれる人。
こんなにも愛しい人を決して失いたくない。
「っ信長様……」
「伽耶 」
私の不安を拭うように信長様は長く優しいキスで私をたくさん包み込んでくれた。
・・・・
・・
「ふふっ、お団子砂だらけ…」
手の上にあったお団子は口づけに夢中になりすぎて砂がついてしまったけど、
「払えば何とか食べられるだろう」
と信長様が言うから口でフーと砂を吹き飛ばして口に入れたら、
「やっぱりジャリジャリしますね」
ってなって大笑いしながら食べた。
戦の足音はもうすぐそこまで迫っていて、その足音が真っ先に自分の元に辿り着くとはその時の私は思ってもいなくて…、その夜はそのまま天主で信長様と世が明ける頃まで愛を確かめ合った。