第24章 エゴサーチ
「私も、義元さんにお会いできてよかったです」
本当に良かった。
人は十人十色で、個性があって当たり前。
彼と話していたら、噂話で右往左往して焦っていた自分がなんだか馬鹿らしく思えて来た。
「伽耶さん、今回俺達がここに立ち寄ったのは堺に向かうためなんだ」
「堺?大阪のこと?」
「そう。その大阪に用事があって行くついでに義元さんに付き合って安土に立ち寄ったんだ。でも君の元気な姿が見られて良かった。また会いにくるよ」
「うん。私も会えて嬉しかった。それにモヤモヤしてた気持ちも吹き飛んだし、ありがとう」
「役に立てたのなら良かった」
佐助君と貴族の中の貴族人、今川義元さんはお店を出て行き、私もお目当ての物を探し出せそれを購入してお店を出た。
「伽耶」
外には、馬にまたがり待ち構える信長様の姿…
「お迎えに来てくれたんですか?」
馬に乗せてもらうため手を伸ばすと、
「………つまらんな、問題は解決したようだな」
信長様は残念そうに笑って私の腕を引き上げ、馬へと乗せてくれた。
「……やっぱりさっきの態度、バレバレでしたよね?」
「あれで誤魔化せたと思われては天下人の名が廃る」
ニッと笑う信長様はやっぱり誰よりも一番かっこいい。
「買い物は済んだのか?」
「はい。素敵な反物を買えました」
「ならば汁粉を食べに行くか?」
「うーーん、それも魅力的ですけど湖が見たくなったので、今から連れて行ってもらえますか?」
「そんな事でいいのか?いつもながら安上がりな女だな」
逞しい腕が背中越しから私を抱きしめ、
「それが私にとっていちばんの贅沢なんです」
私もその腕に頬を寄せた。
(これは、人々から贅沢な女だと言われても仕方がないな…)
だって信長様と二人っきりの時間を持てるなんて、こんな贅沢な事が私はできるのだから……
そして湖に来た私たちは馬から降りて砂浜へと腰を下ろした。
「伽耶、手を出せ」
「えー、何ですか?」
怪しみながらも言われたままに手を出すと、ポンと紙に包まれた何かが手の上に置かれた。
「何だろう?開けても良いですか?」
「ああ…」
ガサガサと包みを開いて行くと…
「わあっ!お団子っ!」
あんこのたっぷり乗ったお団子が包まれていた。