第4章 カエルの正体
家康は会った時からずっと素っ気ない感じだけど、「俺の名前は呼び捨てで良いよ」って言ってくれた辺り良い人だと思うなぁ。
武将たるもの、普通は「様を付けろっ!」とか言って来てもおかしくなさそうなのに…政宗もそうだけど、みんな結構優しいな。
この半年間、愛情にとても飢えていただけに、人々の優しさがとても身に染みてしまう。
「えっと、最後は明智光秀邸…」
最後の明智光秀さんは一体どんな人なんだろう…?
歴史で習った限りでは本能寺の変の首謀者で、三日天下と言われるほどの短い天下取りだった人…。でも信長様は私が助けて生きているし、佐助君も言っていたけど、どうもこの時代は私たちの習った歴史と若干ズレている。私が原因なのか、それとも4年前にここに来た佐助君が原因なのか、それとも私たち二人なのか…
「あー無理無理っ!」
考えても仕方のないことを考えるのには慣れていない。それに、私のせいで歴史が変わるなんて、そんな大それた人物でもないってことは、自分がよく分かってる。
「気にしない、気にしない。…ごめんくださーい」
気になることには蓋をして、私は明智御殿の扉を開けた。
「光秀様なら自室においでです」と言われそのままお部屋へと通された。
「よく来たな。茶でも飲むか?」
「あ、大丈夫です。これだけ渡しに来ただけですので、すぐにお暇します」
(お暇しますの使い方、間違ってないよね?)
ここに来て辛いのは、ちゃんとした言葉遣いじゃないと通じないと言うこと。純日本語?(これもおかしいか)じゃないと中々通じない。
「まぁ遠慮するな、何も取って食いやしない。座れ、茶を入れてやる」
「はぁ……」
まぁ、お茶位なら頂いちゃおうかな。と思った私はすぐに”茶”の違いに気付く。
トン、と私の前に置かれたのは緑茶とかほうじ茶とかではなくお抹茶。
「そうか、茶の湯かぁ」
「お前の時代でもあるだろう?」
「はい。でも、あまり私の周りで嗜んでいる人はいなくて…何回か飲んだことはあるんですけど…」
軽く一杯と思っていたのに、非常に緊張する一杯に変わってしまった。