第24章 エゴサーチ
(わぁっ!綺麗な男の人)
男の人に綺麗という形容詞を使うのはあまりないけど、その男性の纏う空気と言うかオーラも半端ない神々しさが漂っていて…
(少し…楓と雰囲気が似てるかも…)
見るからに高貴な方と分かるあのオーラ、きっと普通の人じゃないっ!(買い方がすでに普通じゃないし…)
少し長めの黒髪を横で束ねたその男性は、店中にいる者から向けられる視線を気にする事もなく優雅な仕草で品物を手に取り見ていく。
(綺麗な手……)
まるで陶器のように美しい白磁の手に見惚れていると、その人物と目が合った。
(あ、目も綺麗……)
玻璃の様な目は彼の存在をさらに崇高なものへと高め、まるで彼自身が美術品の様に思えた。
「……綺麗だね」
美術品の様に綺麗な口が私を見て綺麗だと言った。
「えっ、ええっ!そっ、そんな滅相もないっ!」
慌てて手と首を振ると、
「君のその手に持ってる反物、とても綺麗だね」
(あ、こっちか……っ!)
私の事ではなく反物のことだと気づき、穴があったら入りたい気持ちになった……(恐るべし自意識過剰……!)
「あ、ああ、着物…、そう…綺麗ですよね。婚礼用の衣装にと思って…見ますか?」
恥ずかしさを誤魔化すため、手に持つ反物を彼の方に差し出した。
「ありがとう。ああ、この繍箔(ぬいはく)が華やかさを彩っていてとても良いね。もしかして…君が着るの?」
綺麗な指先で金箔をなぞりながら彼は私に尋ねた。
「違います。私はお針子でこれは依頼品なんです。私もいつか着たいですけどね。ふふっ…」
自分が結婚なんて想像はつかないけど、いつかそんな日が来たら、自分で仕立てたいとは思い、自然と笑みがこぼれた。
「そうなんだ。君にもとても似合うと思うよ」
そう言って彼は反物を私に戻してくれた。
「それにしてもたくさん買われるんですね?何か商いでもされてるんですか?」
商人にはとても見えないけど、でも器を全種類買うなんて商売以外ではあまり考えられないと思い、質問をしてみた。