第24章 エゴサーチ
今日はよく人に後ろに立たれる日だ。
「そんなに見たいのなら今すぐに見せてやる」
もうイタズラする気一杯の顔が迫り、
「んっ……!」
突然のキス……?(嬉しいけど)
驚いている間に唇は離れ、ふっと笑った信長様の腕の中に閉じ込められた。
「……っ、笑顔、見せてくれるって」
「好きなだけ見つめて構わん、この顔は貴様にしか見せてはおらん」
見ていいって言ったくせにまた唇を重ねて来るから見ることなんてできない。
「ん…」
「そんな顔…俺以外に決して見せるなよ」
唇を離した信長様は満足そうに濡れた私の唇を親指で拭って去って行った。
「うーー、キス魔王……っ、」
人を蕩けさせておいて涼しい顔で去って行くなんて……
壁に寄りかかりドキドキする胸を押さえながら唇を指でなぞっていると…
「……あんまりあの人の好き勝手にさせないほうがいいよ」
いつの間にかまた家康が後ろに……!
「いっ、家康っ、いつの間にっ!」
「俺も仕事があるからもう戻ろうと思って出て来たらあんた達が……」
「っ!ごめんっ!」
キス魔王からのキスで一番困ることがこれだっ!
場所がどこかなんて気にならなくなる位に気を持ってかれてしまう。
「そんな事より…大丈夫?」
呆れ顔を素に戻して家康は私に気遣いの言葉をくれる。
「え?さっきの信長様の事?」
キスの余韻で心臓は騒がしいけど……
「そうじゃなくて、楓の事…あんたのことだから気にしてると思って…それを言いに来たんだけど…」
「楓の事?気にしてるって何が?」
むしろ色々と教えてもらえてとても感謝しているんだけど…
「……………………そう、ならいい。今のは忘れて」
そう言って家康は去って行こうとするけど……
「家康待って!」
咄嗟に家康の着物を掴んだ。だって、今の間の長さは見逃せない。
「何?」
「何じゃないよ、忘れてなんて意味深なこと言われて忘れられるわけないでしょ?」
言葉の感じからも誤魔化して去ろうとした感じからも、良くない感じが伝わってくる。
「教えて?何言おうとしたの?」
「……………っ」
家康は少し困ったように考えた後…
「…あの子を身請けした件で、あんたと信長様が色々言われてるって……」
言いづらそうにそう言った。