第23章 今川の姫
そんな愛しい人の腕をそっと外して身を起こし、伝えたい言葉を口にする。
「今日は遊女屋の前でも、その中でも、たくさん仕置きを受けたのでもう受けません」
町のみんなにも、遊女屋の女将さんにも、私のありもしない性癖を疑われたんだもの…あの公開処刑のような仕置きで十分なはず!
「ほう、俺の仕置きを受けぬとは面白いことを言う」
信長様は口の端を上げ挑戦的な顔で私を見た。
「お仕置きは受けません。でも、色々とわがままを聞いて下さったお礼はさせて下さい」
そう、今夜は仕置きを受けるのではなくお礼がしたい。
「礼だと?…まさかとは思うが、謝礼を述べて終わりではあるまいな?」
信長様は今度は片眉を上げ、訝しげな顔で私をまた。
(ふふっ、今夜は信長様の方が百面相してるみたい)
そんな信長様を愛おしく思いながら、口では伝えられないお礼をそっと信長様の唇にした。
「……っ、もしや、これで終いだと言うわけではなかろうな?」
私からの急なキスに驚いてはいるものの、満足はしていないと顔が言っている。
「まだ…終わりじゃありません」
そう答えて私は帯に手を掛け自分で解いて行く。
信長様はそれをじっと見つめる。
(うぅ、恥ずかしい…)
でも、今夜はずっとこうしようって心に決めてたから…だから恥ずかしい気持ちを抑える為にお酒も少したくさん飲んだんだから…
小袖を脱いで襦袢の紐も解いた。
顔が熱い……
恥ずかしくて視線を逸らしたままだけど、痛いほどに信長様の視線を感じる。
ふと、昨日の夜にフルーツ盛りを平らげたことを思い出し、お腹がぽっこりしていないかと気になったけど、今夜はお酒の力がその羞恥も取り払ってくれた。
襦袢の袷に手を掛けて開き、肩からずらすように降ろしていく。
「……綺麗だな」
信長様は呟くようにそう言って、私の首元に大きな手を置いた。
「……っ、」
熱い手の平の感触だけで体は小さく跳ねる。
「信長様がそう言って下さるから、私は綺麗になれるんです」
「では、毎日言おう……いや、それはそれで困るのか……?」
ククッと、自問自答し笑う信長様に構う余裕は今の私にはない。
襦袢を脱いだ私は、信長様に口づける事で沸騰しそうな恥ずかしさから逃げる。
啄むようなキスを数回して心を落ち着かせ、今度は信長様の帯に手を掛けた。