第23章 今川の姫
「ですがそれは信長様も同じだと思いますけど…?伽耶がいるのに楓もお側に置くつもりですか?」
(たっ、確かにっ!えっ、うそっ!そう言う展開っ!?)
晴天の霹靂?寝耳に水?それとも虚を突かれるっ!?
家康の突っ込みに様々な言葉が頭の中に浮かび上がり驚いていると、
「たわけっ!」
「痛っ!」
心底呆れた顔で、信長様は私の額を指で弾いた。
「家康貴様もだっ!この女を身請けするのは伽耶の頼みだと言ったであろう?この者は伽耶付きの侍女として安土城で働かせることとする」
「「「は?」」」
「今川の姫ならば伽耶の教育係に不足はない。初音…いや楓、不服はないな」
信長様は呆然とする楓さんに意思確認をした。
「……っ、恐れながら、私は滅びたといえ今川の、敵方の者。そのような者が信長様の寵姫様の侍女など許されますでしょうか……?」
(敵方…そうか、歴史に詳しくなくても、桶狭間の戦いは有名だ)
そんな事、全然気にならないのは私がこの時代の人間じゃないからなんだろう。この時代はしがらみだらけでとても窮屈だ。
「ふっ、そんなことを気にしておるのか?無用だ!俺の寵姫は己をカエル憑きだと言う俺に負けず劣らずかなりな変わり者だ、そのような些細な事気にするはずもない。そうだな、伽耶?」
うぅ…こんな所でカエルを出さないで欲しいけど、今日は特別中の特別!
「はい。そうですっ!そんな事全然気になりませんっ!楓さんにいろいろと教えて頂けるならそんな心強い事はありません。私と一緒に安土城に来て下さいっ!」
だって、とても素敵な提案なんだものっ!
楓さんには時間がない。けど、家康が覚悟を決め彼女を受け入れるのには時間がかかる。
苦楽を共にして来た家臣たちの事を思えば思うほど、自分の事でも簡単に家康は決められないんだ。
信長様はそんな二人の状況を考えた上で、楓さんを私付きの侍女と言うことにして、二人に時間をくれたんだ。