第23章 今川の姫
「っ………!」
(ぜっ、全部分かってやってた!)
こうなることを予想して全て信長様の手の平の上で転がされていたのだ。
(何だか、昨日からの事を倍返しされた感が……)
「ほんとあんたたちは、人のことに首を突っ込んで…」
家康は軽くため息を吐いて部屋へと入り腰を下ろした。
「あの、ごめんね…?」
「別に…、で、これはどう言う状況ですか?」
家康は厳しい顔で私達三人を見る。
「この女が気に入ったのでな、伽耶と二人俺の夜伽をさせてやろうと思ってな」
「っ……!」
「信長様っ!」
何でそんな嘘を……!
「何か問題はあるか?この店はそう言う店だ。貴様とて分かっておろう?」
信長様は言葉を続ける。
「っ、分かってますよ。だから俺なりに原因を探って…」
「それが何だ?そんなくだらん事をしておるうちにこの女は俺に抱かれる事になるが、それで良いんだな……」
「………っ」
家康は言葉を詰まらせた。
(ああそうか、信長様は家康の気持ちを知りたいんだ…)
本音をなかなか漏らさない家康の心を、こうやって煽る事で引き出したいんだ……
二人の睨み合いが続き、嫌な緊張と静寂が流れる。
「あの、皆様……」
静寂を破ったのは楓さんだった。
「もし、私の事で何かご迷惑をおかけしているのでしたらそれは無用です。私はもう遊女として生きて行く覚悟はできておりますので」
「楓さん」
「ほう、さすがは今川の姫。肝が座っておるな」
「それはもう昔のこと。今は初音と言う遊女でございます」
本当に、覚悟を決めているんだろう。
私たちを真っ直ぐに見つめそう言う彼女の目には、覚悟の色が見える。
「っ、馬鹿じゃないの!あんたこの仕事が、身を売る事がどんな事か分かってる訳!」
家康はそんな彼女に向かって声を荒げた。