第23章 今川の姫
「初音と申します。初めてですが精一杯ご奉仕させて頂きます」
信長様と広めの部屋で待つこと少し、昨日見た女性が綺麗な衣装に身を包んでやって来た。
「初音…?確か楓さん出て名前じゃ…」
「ここでは実名は使わん」
私の疑問に、信長様は私の耳元でこそっと小さく教えてくれた。
「あ、そうか…」
(源氏名だ)
「あの、本日は複数での情交をお望みと伺ったのですが…私は何もかも初めてでしてその……..」
そう言って俯いた彼女はとても気品に満ち溢れていて、何とも言えない柔らかで育ちの良いオーラが漂っている。
城の中は男女問わず殆どが武家の家柄で全ての人に気品が備わっているけど、何だか桁違いな気品の良さだ。
「あの、私と信長様はそう言うつもりで…」
「案ずるな、俺たちはそう言った事に慣れている。優しく教えてやる」
私の言葉を遮りノリノリで答えたのは信長様……!
「は?信長様…今なんて言いました?」
(慣れてなんてないしっ!した事ないしっ!)
「先ずは俺たちが手本を見せてやらねばならんな」
「ちょっ、信長さっ、んっ!」
素早く押し倒され首元に強く吸いつかれた。
(なに?どうなってるの!?)
「なっ、何してるんですか?」
「いきなり三人は貴様も辛かろう?気持ちを昂らせてやろうと思ってな…」
「じ、冗談ですよね…?」
何のための振りかは分からないけど、揶揄われているのだと思い信長様の胸を押した。
「冗談かどうかは、貴様で確かめよ」
この熱の籠った目……本気……!
「………っ」
絡まった視線に捉えられ近づいてくる顔をただ固まって見つめていると、
スパンっ!
襖が勢いよく開いた。
「……ふっ、やっと来たか」
私の顔の目の前で信長様は可笑しそうに笑うと、
「随分と遅い登場だな、家康」
部屋の前に不機嫌に立つ家康に向かってそう言った。
「……っ、人のこと呼び出しておいて、何やってるんですか」
組み敷かれ口づけられそうな体勢の私たちを見て家康は冷ややかな視線を送る。
「違っ、家康っ、これは違うのっ!」
(うーーー信長様のバカっ!)
慌てて信長様から離れて信長様を睨むと、
「これに懲りたら、少しは大人しくするんだな」
ふんっと鼻を鳴らして俺様な笑みを浮かべた。