第23章 今川の姫
いつもの夕餉の膳と、フルーツと甘味盛りの膳。
「こんなに食べきれないよ……」
こんなに食べたら、また隠れてダイエットする事になるじゃない…
でも信長様の心遣いが嬉しくて感動してしまう。
「……ん?」
よく見ると、フルーツ盛りの横に文が置かれてある。
「信長様からだ…っ!」
その文を手に取り広げれば、私にも読める簡単な文字で明日の夕方は逢瀬に行こうと書いてある。
「……っ、それまでにこの水菓子を食べて機嫌を直せって……信長様優しすぎだよ……」
むしろ信長様にあんな態度をとった私を叱るべきなのに……
初めてもらう文は愛情に溢れていて、またもや信長様の器の大きさを思い知らされる。
ほらね。好きな人と一緒にいられるって、こんなにも幸せで胸がくすぐったい。
全ての人にその願いが叶うなんて思ってないし、そんな驕り高ぶっているわけじゃない。
でも、家康とあの女の人はきっと互いに思い合ってる。二人にもこんな時間を過ごして欲しい。
どうにもならない事がたくさんあるこの時代だからこそ諦めてしまうのではなく、諦めたくない。
「頑張る!そして食べるっ!」
ダイエット確定になりそうだけど、夕餉もフルーツ盛りもお団子の甘味達も全てを平らげ、信長様の文を胸にその夜は眠った。
〜次の日の夕方〜
信長様が私を馬に乗せ逢瀬だと言って連れて来てくれたのは例の遊女屋だった。
「信長様っ!」
馬上で信長様を振り返り見れば、
「他人事に首を突っ込むのは気に入らんが、もう既に俺にも影響が出ておるからな…」
ムスッとした顔でそう答える信長様に、昨夜の自分の酷い行いを思い出して反省する。
「昨夜はごめんなさい。でも私…んっ!」
言葉よりも先に軽いキスをされた。
「早々に解決して貴様の憂いを晴らす。反論は許さん」
「……っ、はい。ありがとうございます」
反論なんてあるはずない。
この件が解決したら信長様の望む事は可能な限り応えようと、一人で勝手にそのシーンを妄想して熱くなった。