第23章 今川の姫
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夕食の膳が置かれても天主にやって来ない伽耶を心配して伽耶の部屋へと迎えに行った信長は、思わぬ悩みを聞かされ、そして最後はその部屋から追い出された。
「あのじゃじゃ馬め……」
閉められた襖の前で信長はボソッと呟き、一人天主へと戻った。
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「ど、どうしよう………っ!」
わーん!やっちゃった!
信長様を追い出しちゃった!
後悔先に立たず!
信長様を追い出してしまい、しかも戻って来る気配どころか居なくなってしまったことを、襖を少し開けて確認した私は大後悔をしていた。
それどころか、
「解決するまで会わないとか言っちゃった!」
何て出来もしない強がりをっ!
せっかく心配して迎えに来てくれたのに、頭に血が登ってあんな事言っちゃった!
「絶対に怒ったよね?うん、だって腕から飛び降りた時の眉間のシワ見た?かなり怒ってたよね……!」
今すぐに謝りに行くべき?
でも解決するまでって言ったくせにってならないかな…
「あーん、どうしよう!」
悩み事が二つに増えてしまい頭を抱えていると、
「伽耶様、夕食の膳をお持ち致しました」
「………え?」
女中さんが、天主にあったはずの私の膳を持ってやって来た。
「あの…」
「信長様から、伽耶様の膳はこちらへ運ぶように言われました」
戸惑う私に女中さんが説明をしてくれ、私の膳を部屋の中へ運び入れた。
(ヤバい…すごい怒ってるのかも……!)
もはや夕餉を理由に行くこともできなくなってしまった!
どうしよう、どうしよう、どうしよう!!
「あと、これも伽耶様へ信長様からです」
焦る私の前にもう一人の女中さんが入って来て、夕餉とは別の膳を置いた。
「これ……!」
それは、水菓子の盛り合わせと私の好きな甘味を乗せた夢のような膳…
それを見て分かってしまった。
信長様は怒ってるんじゃないって事が……
「では失礼致します」
女中さん達が部屋を出て行き私は置かれた膳の前にドキドキしながら座った。