第23章 今川の姫
「な、何でですかっ!?」
「当の家康が動かぬのに俺たちが動くわけにはいかぬ」
「それは…そうですけど………でもそれだと間に合わなくなるかもしれないのに…」
「その女が遊女となり身を売ろうが貴様には何も関係ない」
「そんな言い方……!」
「伽耶、貴様の願いならば聞いてやりたい所だが此度は聞いてはやれぬ。この話は終いだ」
「えっ、…っわっ!」
話を強引に終わらせた信長様は膝の上の私を腕に乗せて立ち上がった。
「飯が冷める。天主へ戻るぞ」
「やっ、待って信長様っ!」
まだ私は納得してないっ!
「貴様の待ては聞かん」
「いやっ!私だけ幸せになんてなれないっ!」
信長様の腕の中から飛び降りて私は部屋の柱へとしがみついた。
「はっ?何を言っておる?」
信長様の困惑顔には申し訳ないけど、
「だっ、だって、私は幸せだから…」
「だから何だ」
「だから、辛い思いをしてる二人を差し置いて信長様と幸せに浸るなんて出来ませんっ!」
「何っ!?」
「信長様の今回の件へのお気持ちはよく分かりました。あとは私一人で考えますので、今日はもう一緒にはいられません」
「貴様…いい加減にしろ」
柱に捕まる私の元へ圧をかけながら歩いて来る信長様を阻止するべく、柱から手を離して信長様の胸に手を当て廊下まで押した。
「解決するまで信長様とは会えませんっ!」
「おいっ、伽耶っ!」
「お休みなさい、信長様」
スパンッ!
気持ちが揺らがないように、思いっきり襖を閉めた。
「伽耶っ!」
だって、だってしょうがないじゃない。
家康と彼女は絶対に何かあるもの!
彼女の事が頭にある間は信長様に甘えるなんて出来ないっ!
家康はとても大切な友達なの。だからこの件が解決するまでは…
「信長様にはお会いしませんからっ!」
助けたい。でもどうすればいいのか分からない私はとてもテンパっていて、後悔しか残らない行動に出てしまった。