第23章 今川の姫
家康が色々と考えていることを知らない私は、家康の御殿からお城へと戻り、ない知恵を自分の部屋でフル回転させていた。
「どうしよう……、あっ、また縫い過ぎたっ!」
ソワソワと、どうにも落ち着かない体を針仕事をする事によって鎮めている為、さっきから何度も縫う場所を間違えては糸を解いてを繰り返していた。
「身請け金ってどれくらいなんだろう…?」
背負ってる借金にもよるんだろうけど、年季が明けるまで返し切る事はまずないと聞いたことがあるから、かなりな額である事は間違いない。
「そんなお金は持ってないし、借りれるあても…………なくは…ない?」
(信長様に相談したら貸してくれるかな……?)
「いやいや、それはダメ!」
信長様はきっとお金持ちだろうけど、それはなんか違う気がする…
(でも、ちゃんと返せば問題はない……?)
「って、ダメダメっ!返せるあてなんか全然ないし…」
それに、恋人同士だからこそその甘え方はしてはいけない。
「うーーーん、どうしよう…」
考えはまた始めに戻ってしまう……
良い考えが浮かばないまま時間だけが過ぎて行く。
そのままうーーーん、と頭を悩ませていると、
「何をごちゃごちゃ言っておる?」
大好きな声が聞こえて来た。
「信長様っ!」
手元にあった目線を上げれば信長様が襖から私を見て笑っている。
「百面相でもしておるのか?コロコロと表情を変えて…飽きん奴だ」
「百面相って……!」
ダメだ、部屋に入ってくる信長様の顔がお札に見えてしまう。
(こらっ!伽耶っ!最低だそっ!)
心の中で秀吉さん口調で自分を叱りつけ視線を逸らす。
「もう夕餉の時刻だと言うのに部屋に戻っても貴様が来ておらんので迎えに来た。まだ仕事をしておるのか?」
邪な気持ちを抱くこんな私のことを信長様は心配して来てくれたらしい。