第23章 今川の姫
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「まぁ、伽耶様!ようこそいらっしゃいました」
暖簾をくくればこの間の女将が出迎えてくれた。
「あの、こんにちは。この間は大変ご迷惑をお掛けしました」
まずは先日の非礼をお詫びした。
「良いんですのよ。中々見られない信長様も見られましたし、楽しませて頂きましたわ」
「中々見られない信長様…?」
酔っ払ってたからどんな信長様だったのか覚えてない…
「素敵でしたわ。お酔いになった伽耶様のお相手をされる信長様も、伽耶様のされる行動全てを心配そうに見守る信長様も…」
「そ、そうですか…」
今更ながらだけど…やっぱりみんなの目に私は酔っ払って映ってたって事だよね…
(他の人の目には普通で映っていたかった…。いや、無理だとは分かってるけど…)
「所で、本日はどう言ったご用件で?」
「あ、はい。あの、先ほどこちらに新しく入った女性がいると思うのですが…武家風な女性で楓さんとおっしゃる…」
「……確かに、そう言った名前の者が本日私の所へ売られて来ましてが、彼女が何か…?」
女将は今の今まで浮かべていた笑みを消すと、凛とした顔で床の上に正座をして居住まいを正した。
和やかだった空気がぴんと張り詰めた。
「あの…彼女はその…どう言った仕事に就くのかな…と思いまして…」
「失礼ですが、彼女と伽耶様は何かご関係でも?」
「え?…あの、私の知り合いではなくて知り合いの知り合いで、それで気になってしまって…」
(そうだよね、突然来てこんなこと聞くの失礼だよね)
はっきり言って私は他人なのに、一回飲みに来たくらいで店の個人情報を教えてくれなんて、非常識に違いない。
「その知り合いとおっしゃる方は、殿方で?」
女将はキリッとした表情を崩すことなく私に質問を続ける。
「は、はい。そうです」
「その殿方は、うちの者とどう言った関係だと言っておられるのですか?」
「それは、何も聞いてません。でもただの友達ではない気がして…それで…」
「それでここへ来て、彼女の今後をお知りになりたくなったのですね?」
「はい。そうですっ!彼女がどうしてここに来てこれから何をするのか教えて頂けませんか?」