第23章 今川の姫
(あ、遊女屋へと売られていく女性とその仲介の男性……?)
遊女屋はすぐそこだし、この時代にはこんな事は日常茶飯だと聞いている。
彼女もそうなのかもと、ダメだと分かっていても目がその二人の姿を追っていると、
「っ、楓………?」
家康がその女性を見て楓と呟やいた。
「えっ、家康……?」
家康を見ると、その女性を見て固まっている。
「家康……様?」
その女性も家康に気付き、足を止めた。
(二人は知り合い……?)
「おい、立ち止まるなっ!行くぞっ!」
付き添いの男がドスを効かせた声を女性に浴びせ、その女性は頭を下げて遊女屋へと入って行った。
「どう言うことだ……?」
家康が苦しそうに声を漏らした。
「今の人、家康の知り合い?」
「え?…いや、…ああ、まぁ、昔の知り合い…….」
「そうなんだ…」
珍しく歯切れの悪い回答と、彼女が入っていった遊女屋をじっと見つめ続ける家康に、それ以上聞く事はできなかった。
・・・・・・・・・・
とは言え、
「やっぱり気になる」
お城に戻ってからも、さっきの光景が頭から離れない。しかも、知り合いって言ってもなんか特別な知り合いって感じだったし…
楓って、確かに家康は彼女のことをそう呼んでいた…
家康から女の人の話なんて聞いた事ないし…もしかして、恋仲だったとか……?
「尚更ダメじゃん!」
だってあの人…遊女屋へと入って行ったよ?
それって、そう言う事だよね…?
「あー、じっとしてられない!」
彼女が入って行ったのは、この間私が酔っ払った遊女屋だった。あそこの女将ならこの間少し話したし、何か教えてくれるかも知れない。
「善は急げって言うし、聞きに行こう!」
いても立ってもいられず、私は遊女屋へと向かった。
※楓さんの名前、#NAME4 #で変更できます。