第1章 不幸な出来事は続く?
「さ、帰ろう」
どこを見る気にもなれないけど、急ぎ足で戻る理由もない私は、旅館までの道のりをそのまま歩いて帰る事にした。
土産物屋さんや甘味処、歴史的建造物や跡地が歩いている私の目をそれでも楽しませてくれる。
そしてふと目に入った一つの石碑…
「本能寺…跡地……?」
本能寺って、あの織田信長が明智光秀の裏切りによって殺された所だよね?
「本当にここ?」
日本史に詳しくなくてもほとんどの人が知っているであろうあの”本能寺の変”の場所とは思えないほどに周りは建物だらけで、あるのは石碑と説明書きのみ。
「もっと観光地化されてるんだと思ってたけど、意外…」
天下目前で命を散らした戦国大名の最後の地にしてはとても静かに歩道沿いに佇む石碑に、何とも言えない気持ちになった。
「えっと、なになに…天正十年、1582年の本能寺の変にて…、これだと何月に起こったのか分かんないな?」
気になった私はスマホで本能寺の変と検索。
「あった。……えっと、天正10年6月2日、西暦だと1582年6月21日だって。…って440年前の今日じゃん!」
その場に出くわしたわけでもないのに、440年前の今日ここで、織田信長が討ち死にし、たくさんの家臣達も亡くなったのかと思うと、なぜか背筋がぞくりとした。
「手を合わせておこう」
石碑の前で手を合わせ目を瞑ると、背後から人の気配がした。
(あ、誰か来た?)
観光地で人が来るのなんて当たり前だから、私はそのまま目を閉じで祈りを捧げた。
ゴロゴロゴロ……
(ん?雷?今日は一日晴れ間が広がると確かテレビでは言っていたけど…)
目を開けて空を見ると、いつのまにか暗雲が立ち込めている。
「うそ、いつの間に!?」
ポツポツっと、頬に滴の当たる感触…
雨も降り始めたみたい。
「マズイな…」
さっきお祈りしてる時に来た人かな?観光客だと思ってたけど白衣を纏った学生?医者?研究者?らしきメガネの男性がポツリとそう呟いた。
(確かにマズイ、傘持って来てないや)
どこか雨宿りのできる軒下がないかキョロキョロ見回していると、
ピカッ!ドガァーーーーン!!!
雷が例の石碑に落雷した。