第30章 シークレットサンタ
〜情事の後〜
意識を失う事なく情事を終えた私は、息を整えた後、気になっていたことを信長様に質問した。
「そう言えば、信長様は宝石の事とか装飾品の意味合いとかを良くご存知なんですね」
女子力高めの彼氏に女としては負けた気がして複雑な気持ちだったけど、
「いや、俺も知らなかったが、佐助から聞いた」
返ってきた答えは思いがけないものだった。
「えっ、佐助君、安土に来てたんですかっ?」
「知らんのか、あいつは頻繁にこの安土を訪れておる」
「ええっ、そうなんですか!?それならお城に寄ってくれれば良いのに」
(私から会いに行くことができない分、来てたなら寄って欲しかったな…)
「あやつは謙信の忍びであろう?そんな奴が安土にいるというのは我ら織田軍の動向を探る為、極秘任務の為だ。物見遊山で来ておるわけではない」
「あ、そう言う事か……って、信長様は知って?」
(知ってるのに敵である佐助君を見逃してるって事?)
「知られて困る事などこの織田軍にはない。それに、貴様の事で知りたい時にはあの男は役に立つ。泳がせておいて損はない」
そう言えば、月が綺麗ですねって言葉の意味を信長様が知ったのも、密かに佐助くんに聞いたからだった事を思い出した。
「ふっ、謙信の元に置いておくには惜しい男だが、貴様のそばをうろちょろされるのも困りものだからな。益のあるうちは放っておいてやる。来年の”くりすますぷれぜんと”のことも聞かねばならんしな」
「えっ、来年も、してくれるんですか?」
「毎年の恒例行事だと言ってなかったか?」
「言いましたけど…」
(そんなに、楽しんでくれたってこと?)
「ならば来年も期待しておる」
ちゅっと軽い口づけをして、信長様は最高の笑顔を見せてくれた。
「っ、来年のプレゼントを何にするか、今からじっくり考えます」
「毎年貴様がぷれぜんとでも俺は構わん」
「もうっ!」
自分をプレゼントにする事はきっとないけど、そんな事よりも、当たり前に来年の約束をしてくれる事がとても嬉しい。
「伽耶愛してる」
「私も、愛してます」
唇が重なり共に瞼を閉じる。
また来年も素敵な時を過ごせます様に。
心の中でそう唱えながら、私は幸せに眠りについた。