第1章 不幸な出来事は続く?
「伽耶、お前とは終わりだ」
彼からの突然の終了宣言。
「…あ、うん。分かった」
会って言われたわけでもなく、スマホ越しの会話。
一気に力の抜けた私は、その言葉を言うのが精一杯だった。
付き合って二年。
でもこの半年間は、終わりに近づいている気がしていたから、私には”分かった”と言うしかなかったんだ。
初めての彼で大好きだった人。
でも、中々彼の前では素直になれなかった私は、最後の最後まで素直になれなくて、別れの理由すらも聞くことができなかった。
そしてその理由は、無情にも会社の社内報で知ることになった。
私たちは同じ大手アパレルメーカーに勤める者同士。社内恋愛という事もあり付き合っている事は社内では秘密にしていた。だから私が大地と別れたことを知る人もごく一部を除いていない。なのに、別れて数ヶ月経ったある日、社内報の【結婚おめでとう】の欄に、彼と社内の女の子との結婚式の写真が紹介されていて、そしてその更に数ヶ月後、今度は【こんにちは赤ちゃん】の欄に、彼らの赤ちゃんが紹介されていて、私は今度こそ地の底まで突き落とされた。
失恋を癒すには一人旅!
そう思い立って京都に来たものの、来る場所を思いっきり間違えてしまったことにはすぐに気づいた。
どこを見てもカップルと夫婦ばかり。せめてハーフ顔とかなら外国人観光客のフリでもできたものを…
でも、彼と行った場所を1人で行く気にはなれなくて、まだ来たことのない京都へとやって来た。
「とは言え、いくらひとり時間を楽しむ女性が増えてると言っても、ここは今の私には辛いな」
充実したひとり時間と、失恋を癒すためのひとり時間は、やはり心の持って行き方が全然ちがっていて、心が弱っていると、何を見ても景色は色づいてはおらず色めきだっていなくて楽しくない。
結局、恋愛成就の神社を何軒か回って新しい出会いを祈願して旅館に戻ることにした。
パンパンッ!
「(お願いします。素敵な出会いがありますように。もう裏切られませんように。幸せになれますように)」
……可能なら、彼が私の元に戻って来てくれますように…と頭をよぎった思いは必死で打ち消した。