第22章 似合わないもの【恋仲修行 〜三成目線〜】
「ん……っ!」
(っ…、ここ路地……!)
突然の口づけで酔いが一気に醒めた。
「んっ、…やっ……っん」
頭の後ろをガッチリと掴まれていて、抵抗しようにもできない。
「ん……っ」
強引に割り入って来た舌が私の舌を絡め取り吸い上げる。
「んぅ…」
お酒に酔った上に突然の強引なキスで呼吸はついていけず、あっという間に力が抜けて信長様の胸にもたれるように崩れた。
「………っ」
頭を掴んでいた手が緩んで私と視線を合わせる。
「蕩けた顔だな。貴様にはそんな顔が似合う」
ふっと笑って、私の濡れた唇を親指でなぞった。
「っ、どうせ私は色っぽくないし、女っぽくないし、キセルの似合うようないい女にはなれないですよーだ」
今の今だって、私に笑かける信長様の方が艶を帯びていて色っぽい。
「確かに、貴様には似合わないものがいくつかある」
「そんなダメ出し聞きたくないですっ!」
そんな言葉は聞きたくなくて両耳を塞いだ。
「貴様、俺への不満は散々聞かせておいて逃げるとはいい度胸だ」
耳を塞いだ私の両手を信長様は楽しそうに掴んで離す。
「はっ、離してっ!」
「まず貴様には、キセルは似合わん」
ダメ出しするその唇は、チュッと音を立てて私の額に口づけた。
「………っ、」
ダメ出しするクセに甘く締めてくるなんてどんな拷問…!
「色仕掛けも似合わん。それに、あれは俺の前だけにしろ」
チュッと次は頬に…
「んっ…どうせ私には色仕掛けは似合いませんよーだ」
プイッと顔を背けると大きな手の平が私の顔の向きを変えて視線を合わせて来る。
「あと、この遊女の装いはもうするな」
「どうせ色気がないからって言いたいんでしょ!」
「その逆だ。他の男の目に貴様の肌を極力晒したくない。危うく先程は秀吉を斬って捨てる所であった…」
ニッと俺様な笑顔が愛おしくて憎らしい。