第22章 似合わないもの【恋仲修行 〜三成目線〜】
“貴様には似合わん”
はっきりと口に出されたその言葉にツキンと胸が痛みカチンと来た。
(っ、どうせ私は色っぽくなんてなれない)
キッと私が吸うはずだったキセルを口に含む信長様を睨むと、信長様も知らん顔で煙を吐いた。
「まぁまあ伽耶様、今宵は飲んで下さいませ」
「あ、はい。頂きます」
気を使わせてしまった..。
だって、本当は綺麗だって褒めてくれると思ってた。
みんなの前だろうがどこだろうが、こっちが恥ずかしくなるくらいに愛を囁いてくれる信長様だらかこそ、「伽耶、なんて美しいんだ!今夜は貴様を寝かさぬ!」くらいは言ってくれると思ってたのに…(恋愛経験が少ないから妄想は人一倍膨らみがち…)
色っぽく装っても、しなをつくっても、谷間をチラ見せしても、何をしても顔色を変えない信長様なんて知らないっ!
「さ、伽耶様もっとお飲みになって」
「ありがとうございます。このお酒美味しいですね」
迷惑はかけないと言う約束で来たはずなのに、恋文からの嫉妬が尾を引いていた私は、その後も勧められるがままにお酒を飲んで、止める信長様の手を阻止した。
・・・・・・・・・・
どれくらい飲んで、どれ程の時が経ったのかも分からなくなった頃、
「おい伽耶、帰るぞ、立てるか?」
秀吉さんに声をかけられた。
「ん、秀吉さん?…私眠いから今日はここで寝てくー」
もう眠くて仕方がないし、体はふわふわして歩けそうにない。
「お前なー、迷惑かけない約束だっただろ?こんなに酔っ払ってどんだけ飲んだんだ?」
「えー、そんなに飲んらないよー。それに、ぜーんぶ信長様が悪いんだからー」
「こら、いくら酔ってるとは言え信長様の悪口は言うな!」
忠臣秀吉さんは、こんな時でも真剣に叱って来る。
「もーなに言ってるのか分かんない、それに秀吉さんなんかボヤけてるよ〜あははっ!」
「それはお前が酔っ払ってるからだ。おい伽耶寝るなよ、おいっ!」
秀吉さんが私の腕を掴んで立たせようとした時、
「秀吉、伽耶に触れるなっ!」
どこかから戻って来た信長様がそう言って私の腕を秀吉さんから奪い取った。