第22章 似合わないもの【恋仲修行 〜三成目線〜】
女の人の胸に目線がいってないかどうか確認したかったのに、信長様は目を閉じてお酒を飲んでしまった。
(あ、誤魔化したっ!)
「伽耶」
お酒を飲み干した信長様は、盃を私に差し出した。
「あ、はい!」
(えっと、まずは信長様にもたれかかるんだよね…)
お店の女性達の真似をしろと言われたし…色っぽさを磨くチャンスだと思った私は、信長様の腕に頭をもたれさせ、なけなしの胸を両腕で寄せてシナを作りお銚子を手に持った。
「ど、どうぞ…」
「…………」
信長様は何も言わずにただ呆れたように目を細めて注がれたお酒を一気に飲み干した。
(そんなあからさまに呆れた顔しなくても…どうせ私は胸も色気もないですよーだ!)
綺麗だと信長様なら言ってくれると勝手に思っていた私は、信長様に注ぎ終えたお酒を自分の盃に並々と注いで飲んだ。
「まぁ伽耶様、いい飲みっぷり」
褒め上手で勧め上手なお店の女性がさらに私にお酒を勧める。
「伽耶、やめておけ」
信長様が盃に手を被せ飲ませない様にしてきたけど、
「今日は飲みたい気分なんです。邪魔しないでください」
その手を退けて、私は勧められるままにお酒を飲んだ。
そして、気分がふわふわとしてきた頃…
信長様に付いている女性は煙管(キセル)を取り出して吸い始めた。
(※実際、煙管は江戸時代に開発された物らしいです)
フーっと、煙を口から吐き出す女性は色っぽくてカッコいい。
「伽耶様も吸ってみます?」
「えっ、良いんですか?」
じーっと見ていた私に気がついた女性が、新たなキセルに火をつけて渡してくれた。
(私だって…カッコよく吸いたい!)
色っぽく煙を吐き出す自分を想像しながら、差し出されたキセルを手に持つと…
「貸せ」
信長様が横から手を伸ばして奪った。
「っ、何するんですかっ!」
(せっかく吸おうと思ったのに!)
「貴様には似合わん。やめておけ」
そう言って信長様はそのキセルを口に含んで、フーっと煙を吐き出した。