第22章 似合わないもの【恋仲修行 〜三成目線〜】
夜の城下の視察は遊女屋直行かと思いきや、夜の営業をしている飲食店への見回りや、闇営業の摘発、裏通りの治安の確認など実に様々で、遊女屋の宴会場に通された時は既に足がパンパンになる程に浮腫んでいた。
「わぁん、足が痛いよー」
広間についてすぐに足を畳に伸ばして両脚をマッサージでほぐした。
「ふっ、色気のかけらもない…」
そんな私を見て信長様は呆れた笑いを浮かべる。
「うーー、だってあんなに歩くと思わなかったんですもん、視察って大変なんですね」
お昼の視察について行ったことはあるけど、馬に乗っての移動だったから、今日もそんな感じで夜遊びメインだと考えていた。
「夜は特に犯罪が起こりやすい、見落としがあっては付け入る隙を与えるからな」
「そうなんですね」
何だか、穿った見方をしすぎてたらしい…
けど遊びメインでしょ!って思ってましたと本人に言えるわけもなく、心の中で反省しながら疲れた脚を揉んでいると、
「信長様、武将の皆様方ようこそいらっしゃいました」
広間の襖が開いて艶やかな女性たちが入ってきた。
(わぁっ!綺麗)
着物を綺麗に着崩した遊女達は広間の中央に並んで正座し、一同に頭を下げた。
「今宵は、私どもの店を選んで頂きありがとうございます。どうぞごゆるりとお寛ぎ下さいませ」
一番偉い人(女将かな?)と思しき人が挨拶をした。
「うむ、女将、今宵は世話になる」
信長様がそれに応えるように声をかけると、
「まぁ、信長様、そちらの可愛らしい姫様はもしや」
信長様の隣に座る私の存在に気づいた。
「伽耶だ。どうも俺の素行が心配らしい」
意地悪く私を見て笑いながらそう答えた。
「まぁ!」
「ち、違いますっ、社会勉強をさせてもらいに来ました。今日は宜しくお願いします」
私は慌ててその言葉を訂正して頭を下げた。
「ふふっ、思った通りに可愛らしい方。伽耶様、今宵は宜しくお願い致します」
とても大人な対応に、私の態度はますます子供染みて見えて、顔が熱くなった。