第22章 似合わないもの【恋仲修行 〜三成目線〜】
信長様とお城の外へ出ると、秀吉さん達武将が信長様を待っていた。
「おっ伽耶、信長様のお見送りか?」
感心感心と言ったように秀吉さんが笑顔で私の頭を撫でる。
「ううん、私も今日は同行させてもらう事にしたの」
「なにっ?お前も行くのか?」
「はい、宜しくお願いします」
頭を軽く下げると、秀吉さんの顔が渋くなった。
「気持ちは分かるがやめておけ、視察は物見遊山ではないぞ」
「分かってます。だから今日は社会勉強って事で、邪魔はしませんから、お願いします」
「けどな、お前が来ても学べるような事は何もないぞ?信長様の事が心配なら、俺がいるから大丈夫だ」
トントンと、秀吉さんは自分の胸を軽く叩いて安心しろと言ってくる。
「でも…」
「秀吉、小娘の気持ちも汲んでやれ」
「光秀…」
「光秀さん…」
思わぬ助け舟…
「小娘のささやかな頭で考えられる最善の方法が御館様を見張る事だ」
じゃなくていじわるだった!
「伽耶、いつまで話しておる。来い!」
「はい」
信長様に呼ばれ逃げるように二人から離れた。
「行くぞ」
手を取られ長い指が絡んだ。
「…っ、手…繋ぐんですか?」
「何を今更…?」
「そ、そうですけど…」
こんなにも家臣の方達がいる前では繋いだ事ないし恥ずかしい…
「ふっ、先ほどまでの威勢の良さはどうした?」
「え?」
「貴様の頭突き、なかなか効いた」
信長様は額に手を当てニッと笑った、
「あ、あれは……ごめんなさい。もしかしてまだ痛みますか?」
背伸びをして信長様の額にアザができていないかを確認する。
(あ、良かった。アザにはなってないみたい)
夜で暗いからかなり顔を近づけて確認していると、
「あー、コホンッ!」
秀吉さんの咳払いが聞こえてきた。
「あー伽耶、ついてくるのは許すが、他の者達の目があるってこと、忘れるなよ?」
「え、あっ!」
見回せば、視察に同行する家臣達が少し照れたように私と信長様を見ていた。
「し、失礼しましたっ!」
クスクスと笑い声が聞こえる。
「夜道は足元が見づらい、転ばぬよう気をつけろ」
「はい」
私の手を取り歩き出した信長様はやっぱりカッコいい。
恋とは本当に人を盲目にするんだと、身をもって感じていた。