第4章 カエルの正体
「え、なんで知って…」
(まだ昨夜の出来事なのに…)
「惚れさせてみろなんて、どれだけ自分に自信あるわけ?」
この猫っ毛の素っ気ないイケメンは確か家康さん。
「別に、自信があって言ったわけじゃないです。無事に自分の家に帰るためっていうか……って言うかなんで皆さん知ってるんですかっ!?」
皆からの好奇の目に怒りを覚え、上座に座る信長様を見ると、
「皆に周知しておかねば賭けば面白くなかろう?」
しれっとした顔で私の疑問に答えて来た。
「おっ、男のお喋りは良くないと思うっ!」
こんなたった半日で知れ渡るなんてっ!
「おいお前っ、信長様に失礼なことを言うな、家臣として信長様の置かれた状況を知っておく事は当たり前だ」
今度は秀吉さんが険しい顔で私を睨む。
「でも、これって個人的な事で戦とか政治に関係ないし…」
もしかして、私がカエル憑きって事も話したんじゃ…
女はお喋りな生き物だけれど、男もお喋りな生き物なのかと、半ば諦めたつもりでか今度は信長様を睨むと、
「そんなに睨むな、皆に話したのは賭けの事だけだ。貴様の体の秘事は言ってはおらん」
「なっ!」
(あわわわわっ!そんな言い方、あらぬ誤解を産んでしまうっ!)
止めてーーーっ!と、思わず両手を前に出してオーバーリアクションになってしまった。
案の定、広間からはピューと口笛が聞こえて来た。
「なーんだ、もう手を出されたか。思ったより早かったな」
「政宗さんっ!違いますっ!誤解ですっ!」
その意味ありげな笑みをやめてー!
「俺のことは政宗でいい。今度俺にもお前の体の秘密、教えろよ」
艶やかな笑み向けられると、やはり恥ずかしくて顔が熱くなった。悔しいけどイケメンの存在はそれだけで罪だ。
「貴様ら、そこら辺でやめてそろそろ席につけ。飯が冷める」
騒動の発端を作った本人がその場を収め手を合わせ、他の武将たちもそれに倣って手を合わせた。
(むーーーー!)
私の心のバクバクドキドキはまだ治らなかったけど空腹には逆らえず……、仕方なく手を合わせて朝ごはんを食べた。