第4章 カエルの正体
それまでは様々なことに病名をつける意味がわからなかったけど、自分が蛙化現象と言う言葉を知り、私は1人じゃないんだと救われ、病名と言うか、現象と言うか、とにかくそう言うものにとても心が救われる。そう言う人がいるんだと言うことを理解して自分の心も救われた。
そんな時に出会ったのが大地だった。
同期に誘われた社内合コンで、待ち合わせ場所に現れた大地に一目で心を奪われた。その後での居酒屋でも大地との会話は楽しくて…、私たちは2人でその会場を抜け出した。
けどその日は結局、勝手に抜け出したことに激怒した大地の先輩社員の機嫌を取るべく私たちは会場へと戻り、ただ連絡先を交換した。
そして私はその日から大地の事ばかり考えるようになって、次の日、大地から仕事終わりに飲みに行こうと誘われた時はすぐに返信して飲みに行き、ますます彼の事が好きになった。
そこから付き合うまでにそれほど時間はかからず、いつもの蛙化現象もなぜか起こらず、大地の事は知れば知るほど好きになっていった。
キスをすれば、食べる姿を見れば、トイレに行ったりしたら嫌いになるかもなんて事は大地には杞憂に終わり、何度目かのデートを重ね、私は大地と夜を過ごして本当の男女の仲になった。
蛙は現れない。好きは募るばかり。大地は、その名前の通りに私を広い心でいつも包んでくれていたと、あの時の私は思っていたし、幸せだった。
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「おはようございます」
朝餉は大広間にて食べる。と言われたので、慣れない着物をなんとか着付け終えた私は、襖を開け放ってある大広間の入り口前で挨拶をして中を伺った。
「おっ。来たな」
誰かのそんな声が聞こえると、皆が一斉に私を見た。
(な、なに?着付け変かな?)
彼らの視線にビクビクしていると、
「聞いたぞ、お前、信長様に無謀な賭けを持ち出したそうだな」
眼帯のイケメン、政宗さんが嬉しそうにそう言って笑った。