第22章 似合わないもの【恋仲修行 〜三成目線〜】
私はずっと、カッコいい女になりたいって思ってた。デキる女でいたいって…
未来にいた時は可能な限りそこに近づこうって気を張って生きて来たけど、不器用な私はそれを恋人の前でもしてしまい甘える事ができず、彼はそんな私を窮屈に思っていたと思う。
それがどうした訳か、ここに来て信長様と恋仲になってからというもの、私は子どものように感情を隠せなくなっていて、カッコいい女からはほど遠くなっていくばかりだった……
「……っ、やっちゃった…。小学生でも、こんなケンカはきっとしない…」
人にバカと言ったのも、頭突きをしたのも生まれて初めてだ。しかも信長様に……
嫉妬する女になんてなりたくないのに、何で信長様の前だとこんなに子供みたいに…
「あー、ダメ!これは私が悪い」
別に信長様は隠してた訳じゃない。それに信長様ほどの人だもの、これからだってこんな事はある。
私は、信長様の彼女でいる自覚が足りなさすぎる。
「謝りに行こう」
カッコいい、信長様に釣り合う女になりたい。甘やかされるだけじゃなくて、支えられるような…
そう心を入れ替えて信長様の部屋へ戻ったはずなのに…
「………え?」
「今宵は出かける。貴様は自屋へ戻れ」
「夜に、どこへ出かけるんですか?」
「城下の視察だ」
そんな事を信長様が言うから…
「私も一緒に連れて行って下さい」
「は?」
「だって、夜に視察に行くなんて…そう言う所へ行くって事ですよね?」
ケンカした後にそんなこと言われたら不安になるに決まってる。(謝るタイミングも逃してしまったし…)
「連れて行ってもいいが、貴様が来ても楽しい事はない」
じゃあ信長様には楽しいの?と言いたくなる気持ちをグッと堪えて、
「この時代の社会勉強に連れてって下さい。お願いします」
とお願いをした。
だって、就職した会社でも社会勉強だと言って、一度だけクラブへ連れて行ってもらった事がある。女性たちの所作や話し方、聞き上手なところ、褒め上手な所がとても勉強になった記憶がある(実践できたかは別として…)
「分かった。貴様も来い」
信長様は、苦笑いしながら私の頭をぽんっと撫でた。