第22章 似合わないもの【恋仲修行 〜三成目線〜】
「三成君助けてっ!」
「伽耶様……?」
(あ、声もかけずに襖を開けてしまった!)
失礼な入室をしてしまった私の目の前には、猫さんを膝に乗せた穏やかな三成君の姿。
(なんて神々しいお姿っ!)
「突然来てごめんね。いま大丈夫?」
「はい。どうしましたか?」
「あのね、私に読み書きを教えてほしいの」
「読み書き…ですか?」
「う、うん。お恥ずかしながら、私この時代の文字の読み書きがあまり出来なくて、あ、もちろん自己流で勉強はしてたんだけど上手くいかなくて、だからちゃんと勉強したいなって…」
本当は、手紙の中身を教えて欲しいって言いたかったけど、あまりの天使っぷりに自分の邪心が恥ずかしくなり、言い方が変わってしまった。
「私でよければ、いつでもお教え致しますよ」
「本当っ!」
(うう、優しい。本当に天使だ)
信長様の文を手に持っていることも忘れて、喜びを飛び上がる事で表していると、三成君がその文に気がついた。
「その文は、もしかして伽耶様が信長様に書かれたものですか?」
(違う違うっ!書くどころか読むことも怪しいのに…)
「あ、ううん、これは違うの。その…他の女性が信長様に送った文で…頭に来て持って来ちゃったって言うか…」
隠しようがないその文のことを私は正直に打ち明けた。
「なるほど、その文の内容を教えて欲しいと言う事ですね」
「え?違っ」
(もしや超能力者!?)
遠回しにお願いしようとしていたのに、三成君は私から文を取りその中身をガサガサと開き出した。
「あ、あの三成くん…、人の文を勝手に読むのはちょっと…」
(誰か私を偽善者と言って!)
最初からそのつもりで来たのに、その場になると急に尻込みしていい子ぶる自分に呆れてしまう。
けれど、そんな気持ちも三成くんの次の言葉でいとも簡単に吹き飛んだ。