第22章 似合わないもの【恋仲修行 〜三成目線〜】
〜話は少し前に遡る〜
「お邪魔しまーす」
昼下がりの午後、私は一人信長様のいない天主へとやって来た。
珍しい菓子があるから好きな時に食べに行けと信長様に言われた私は、空腹に耐えられずこそっとそのお菓子を食べに来ていた。(ダイエットの反動)
「えーっと、右側の棚って言ってたよね?右、右、…って、棚二つあるじゃん!」
(どっちの棚とか言ってなかったと思うけど…)
まぁいいか、とあまり深く考える事なくとりあえず目の前の棚の右扉を開けた。
「あ、違った!」
もう一つの方だと思い扉を閉めようとした時、香の匂いと色とりどりの紙の山が棚の奥から香り見えた。
「ん?なに…?」
ひと様の、しかも信長様の物を勝手に見るのもどうかと思いつつも、(別にスマホじゃないし)と、訳の分からない理由を言いながらその紙の山を棚から引っ張り出した。
「綺麗、それにいい匂い」
紙の山は雅な和紙達で、そこから様々な香の匂いが漂って来る。
「何かの…手紙?」
丁寧に包まれていて中身を見る事ができないけど、何だか嫌な女の勘が働いた。
(これもしかして恋文じゃ…!)
そう思い他の文も手に取ると、女性らしい素敵な匂いが漂いその人の本気度が伺えた。
(きっと昔にもらったものだよね…?)
現代のようにのり付けされているわけでもないから、信長様が開いて見たかは定かではないけど…
でもなんか…面白くない。
そもそもなぜこんな物が取ってあるの?しかもこんな棚の奥に隠すように…
いやいや待って、雅な和紙に匂い付けがされているからと言って恋文とは限らないじゃない?
でも…ビジネス文書でこんなに派手にすることある?
「ああだめだ、これがそんなビジネスライクな物じゃないって事くらい分かる」
(うう…人のものを勝手に見るのは良くないって分かってるけど…)
あー、中身が知りたい!けどこの時代の文字がまだあまり読めない。
「誰かに解読してもらおうかな……?」
でも、秀吉さんだと勝手に信長様の文をって叱られそうだし、政宗だと後々揶揄われ続けそう。家康はめんどくさいって断られそうだし、光秀さんは…間違ってはいないけど意地悪な解釈を教えて来そう。
「これはもう三成君しかいない!」
手に取った文を握りしめて、私は三成君の元へと向かった。