第21章 深読み注意
「ふっ、深みにハマりすぎだな」
こうして飲んでいても、思うのは伽耶の事ばかり。
恋仲となり数え切れぬほど体を重ねたと言うに、伽耶はまだ俺との夜に体をこわばらせる。
酒を勧めその緊張を少しづつ解きほぐして奴を腕の中へと誘う。
見つめれば奴は再び体をこわばらせて頬を赤く染める。そんな奴の顔に煽られ俺の理性は跡形もなく消し飛びあとは夢中で奴の体の全てを奪っていく。
奴を初めて抱いた夜からその繰り返しだ。
「マズいな…」
奴の事を考えるだけで体は正直に滾りだす。
「信長様、今宵はどの娘を寝所へとお連れくださいますか?何人でも構いませんのよ?」
俺の気の昂りに気づいたのか?女が今宵の相手を決めろと言って来た。
「不要だ。これを飲んだら戻る。後は奴らの好きにさせてやれ」
この熱を鎮められる女は一人しかおらん。
「まぁっ!今宵は選りすぐりの娘たちをご用意いたしましたのに宜しいので?皆信長様の寝所に侍りたいと、心待ちにしておりますのに…」
このような言葉、伽耶には聞かせられんな。
「抱きたい女は一人しかおらぬ」
まぁ、悋気で顔を歪め怒る奴もいずれは見てみたいものだが…
「畏まりました。ですが信長様のお心を独り占めなさる姫が羨ましいですわ。それ程に寵愛されておりますとは…」
「ふっ、その寵姫に今宵はフラれたがな」
「まぁ、信長様ほどの方にそのような…信じられませんっ!」
「女心とはまことによく分からぬものよ。着物を縫いたいと言っておったが、よくよく考えれば今朝から何やら様子がおかしかった」
「ふふ、女には殿方に言えぬ秘め事があるものでございます」
「秘め事か…、食欲が無いと言い、俺の馬にも乗らぬと言い、腹には微妙な時期ゆえ触るなと言う…。貴様にはこの謎掛けが分かるか?」
昨日まではなんの抵抗もなかったことが、たった半日でこうなった理由は一体なんだ?
伽耶の表情や態度から見て大事では無いと分かるが、奴は予想もつかない事をやってのける所があり油断ならんからな…
女子同士ならば何かわかるやもしれんと、女に問いかけると…
「信長様、姫様はもしかして… 」
女は、ハッと驚いた顔をしながら口を開いた。