第21章 深読み注意
「ち、違いますっ…!」
「隠さずとも良い、だから菓子も食べれぬのであろう?」
(本当に違うのっ!)
「後で家康に薬を煎じてもらえ。しかと飲んで養生しておけ」
完全に誤解をしたまま、信長様は、クックっと喉を鳴らしながら歩き去って行った。
「完全に下痢だと誤解された…」
なんて恥ずかしい誤解をしたまま行ってしまったんだ。…とは言えそのおかげで今夜はフリーだ。
「よしっ!作務衣を完成させて絶対に痩せるぞー」
ダイエットに向け、私は燃えに燃えていた。
・・・・・・・・・・
「秀吉、今宵宴を催す」
視察から戻った俺は、伽耶と食すつもりであった南蛮菓子を口にしながら秀吉に宴を開くよう伝えた。
「はっ、…伽耶も、一緒ですか?」
これまでの宴と言えば遊女達を招いて夜通し派手に行う事が多かったため、秀吉の質問の意図はすぐに理解した。
「いや、奴はおらん。よってそう言う宴で構わん」
「はっ、…ですが、宜しいのですか?」
「構わん、たまには金も回さねばならんし、奴らの機嫌取りも必要であろう。今宵は派手に飲んで騒ぐがいい」
「はっ、畏まりました。ただちに用意に取り掛かります」
「待て、これを女中共に配ってやれ」
頭を下げ出て行こうとする秀吉に、南蛮菓子を渡した。
「たまには城の者共も労わねばな」
伽耶と夜を過ごすようになってから、久しく宴を催していない。そんな余裕もなく奴との時に溺れていた。
今宵も当たり前に奴と夜を過ごすつもりであったが、
「ふっ、何を企んでおるのか…あの跳ねっ返りめ」
腹を下していない事は分かっておるし、伽耶が何かを企んでいることは分かっているが、一晩位なら目を瞑ってやろうと思い、代わりに宴を催すことにした。
……とは言うものの、
「つまらんな……」
いざ宴が始まると、以前のように楽しめぬ。
伽耶と過ごさぬ夜がこれ程に退屈だと思うようになるとは思ってもみなかった。
「信長様、あまり飲まれてませんね」
隣に座る遊女がまだ酒の入っている俺の盃に酒を注ぐ。
伽耶と飲んでおるとついつい酒も進むが、奴と話しておらんと酒すらも進まぬと見える。